哲学のプロムナード(ΦωΦ)黒猫堂

推理小説やSFのレビュー・書評・ネタバレ解説・考察などをやっています。時々創作小説の広報や近況報告もします。

京極夏彦 『鉄鼠の檻』 レビュー

 

内容(「BOOK」データベースより)
忽然と出現した修行僧の屍、山中駆ける振袖の童女、埋没した「経蔵」…。箱根に起きる奇怪な事象に魅入られた者―骨董屋・今川、老医師・久遠寺、作家・関口らの眼前で仏弟子たちが次々と無惨に殺されていく。謎の巨刹=明慧寺に封じ込められた動機と妄執に、さしもの京極堂が苦闘する、シリーズ第四弾。

・レビュー

 相変わらずの見事な構成。しかし今回に関しては構成よりも知識面での感動のほうが大きかった。禅というテーマはかなり難しいのだけれど、しっかり理解して小説を書けばこういうミステリとして扱えるんだという感動。ストーリーはそこまで複雑ではないし、起こっていることもそこまで理解不能なものではない。「シンプルだけど不思議」という印象が終盤まで続く、終盤に入ってからはお得意の畳み掛け。一気に霧が晴れて「なるほど」と綺麗に終わるわけである。
 前3作を読んでいればある意味短編小説のような楽しみ方もできる。一つずつ事件が解決し、犯人も動機もその他の謎・不思議も最後にはすっきりと片付く。京極堂の解説と憑き物落とし、僧との会話、そして僧自身の言葉もなかなか面白かったし、いい言葉だなと思うところも多かった。今回はどうも登場人物がみなカッコ良かったなぁという感じがした。
 前作までとは違って概ね予想の付く展開ではあったと思うけれど、「~の正体はいかに」と予想するのはなかなか楽しかった。
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