高羽彩 『PSYCHO-PASS サイコパス (0) 名前のない怪物 (角川文庫)』 レビュー/ネタバレなし
PSYCHO-PASS サイコパス (0) 名前のない怪物 (角川文庫)
- 作者: 高羽彩
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
- 発売日: 2014/09/25
- メディア: 文庫
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『PSYCHO-PASS サイコパス (0) 名前のない怪物 (角川文庫)』
西暦2109年。人間の心理・性格的傾向を数値化できるようになった未来世界。厚生省公安局刑事課に所属し、当時、“監視官”だった狡噛慎也は、“執行官”の佐々山光留と、名門女子高校・桜霜学園の生徒、桐野瞳子に出会う。常守朱が刑事課に配属される3年前、後に“標本事件”と呼ばれ、狡噛が執行官に堕ちるキッカケとなった猟奇殺人事件の真相とは―。本書でしか読むことのできない書き下ろしショートストーリーも収録。
レビュー
『PSYCHO-PASS サイコパス (0) 名前のない怪物 (角川文庫)』という本作はアニメ『PSYCHO-PASS』の外伝的な作品で、文字通りエピソード0に当たる物語になる。小説単独では話がほぼ解らないのでブクログの星は4つにしたのだけれど、アニメも込みなら非常に面白い作品だと思う。
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- 出版社/メーカー: 東宝
- 発売日: 2014/10/15
- メディア: Blu-ray
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本編で触れられていたが内容は不明だった標本事件の真相が描かれているノベルズでアニメが面白かったという人は読んで損はないと思う。狡噛の成長と佐々山の人間性は小説でしかわからない。
特にタイトルの「名前のない怪物」は非常に内容をうまく表してる。
ミステリとして読んでもそれなりに面白い。舞台が100年近く未来なので、独自のルールが敷かれた世界でのミステリだ。どちらかというとサスペンスというのが正しいのだろうけれど。
アニメを見ているとキャラクターのその後を知っているので色々と楽しくなったり悲しくなったり、想像が膨らむ。
猟奇殺人系のミステリはどこか現実から離れていて、面白い。せっかく小説を読むならば、リアリティのあるものに熱中するか、逆に今作のようなSFや猟奇系の事件を追う刑事物なのを読むのが楽しかったりする。
もう一度アニメ1期を観直したくなる一冊だった。アニメ本編のノベライズも上下巻であるらしいのでそのうち読んでみたい。
今はアニメ2期をやっているのでそちらも楽しみ。
この小説にも出てくる「マキシマ」こと槙島聖護もよかったが、2期のカムイもなかなか興味深いキャラだと思っている。
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- 出版社/メーカー: 東宝
- 発売日: 2014/12/17
- メディア: DVD
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山田宗樹 『ギフテッド』 レビュー/警告後ネタバレあり
山田宗樹 『ギフテッド』
『百年法』を超えるスリルと興奮! ! 未知との出会いが読む者の本性を炙り出す、胸打つ大巨編ミステリー
25年前、アメリカ合衆国のミネアポリスに住む13歳の少年の体内に〈未知の臓器〉が見つかった。以後、同様の臓器をもつ子供たちの存在が、世界各地で確認される。
いつしか彼らは、羨望と畏れを込めて「ギフテッド」と呼ばれるようになった。
それから時が経ち、ギフテッドは新たな局面を迎えることとなる。
ギフテットとは何なのか? そして、彼らを待ち受けていたのは……。
理解できないものに対峙する恐怖、信念が根底から揺らぐ恐怖
恐怖は伝染し、拡大し、やがて、暴走し始める――。
進化なのか、異物なのか?
全人類の存在意義を揺るがす、禁断と衝撃と感動のスペクタクル大長編
レビュー
幻冬舎plus×ブクログ共同キャンペーンによるバウンドプルーフプレゼントに当選して読み始めた今作。献本企画は前にも貫井徳郎の『北天の馬たち』が当たったことが会ったから二回目。
なかなか面白いSFだった。簡単に説明するとギフテッドと呼ばれる、通常の人体には存在しない未知の臓器を生まれながらにして保有している子どもたちの物語。
新人類とも呼べるギフテッドは年々増えていき、社会も段々とそれに対して変化していく。良い方にも悪い方にも世論は簡単に傾いていき、段々と未知の力を持つ者とそうでない者に軋轢が生じていく。
古いテーマだけれど、この作品は改めてそういう点をとらえた物語だ。当然未知の臓器が何をもたらすものなのかは誰もが想像する通り超常的なものだが、それに対する恐怖や理解は世界を巻き込み、ついにある日、引き返せない大事件を引き起こす。それがトリガーとなり、世界を揺るがす事件と謎がハイテンポに続く。
終わり方は非常に苦慮したところだろうと想像できる。少々無理があったと思わずにいられないが、ああするほかなかったろうと思う。少なくともシンプルな対立構造に頼らずにできるだけリアルに実際の社会問題を取り込み複雑な「もしも」の世界を作り上げたことは素晴らしいところだと思う。
一気読みをテーマにしたようで非常に読みやすい。面白いので最後まで減速せず読めるだろう。それだけにラストの難しさは急ブレーキの感があるが、ストンと落とされてもそれはそれで納得行かないだろうと思うのであれでいいのかもしれない。
強いて望むならば後日談をもう少し未来を匂わせる内容にしても良かったのではないだろうか。
感覚的には、貴志祐介の『新世界より』の1000年前を読んでいるようで面白かった。
この下からはネタバレ有りで。
ネタバレ
超能力者ものの典型的な形だったと思う。
SPECや、新世界より、今アニメをやってるハマトラなんかが同じテーマだね。要するに昔からある超能力者と非超能力者で人類が二分してしまった時、その進化に社会や世論、恐怖や羨望、色んなモノがどう動いてどう落ち着くのかを扱っている作品と言っていいと思う。
面白いけれど新鮮さはあまりない。作中の超能力は、テレポートや空間を捻じ曲げる能力。それらを覚醒させることができるのが、生まれ乍らにして未知の臓器を持つギフテッドだ。
これは個人差があって特別強いものとそうでないものがいて。予想通り、何人かの傑出した能力者がトリガーとなり物語は事件と謎とともに動いていく。
主人公達川颯斗は同級生だった村山直美のテロによる強行的な差別世論の修正を止めようとする。坂井タケルやアレックス、佐藤あずさ、といったギフテッドや非ギフテッド、様々なキーパーソンの視点で物事を考えられるのは面白かった。
最後はテロリストになりかけていた村山と共に颯斗は、火星にテレポートするわけだが、これはちょっとやりすぎだったかもと思う。
それに根本的に解決はしない。利権を恣にしようと目論んでいたアレックスは今回は失敗したが同じことをするだろうし、あずさは最後までわだかまりを解消できない、他のメンバーも少々難しい立場であるし社会も決定的に変わりはしないだろう。
これはある意味ではリアルかもしれない。そううまくはいかないっていうリアルを描いたものならまさに成功だが、物語である以上もう少しうまく着地させても良かった気もする。「読後感を良くしようとするとこうなるんだろう」と、読者は思ってしまう。
ただ終盤までのスピード感と面白さは良かった。
- 作者: 山田宗樹
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2012/07/28
- メディア: 単行本
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幻冬舎plus × ブクログ 『ギフテッド』(山田宗樹・著)先読みプレゼント 当選~
幻冬舎plus × ブクログ 超話題作『ギフテッド』(山田宗樹・著)を発売前に先読みできる! レアなサイン入りバウンドプルーフ・プレゼントキャンペーン
……という企画に当選しました。
50名なので意外と当たりやすいのかな。
前も貫井徳郎の『北天の馬たち』の献本企画で当たったのでこれで二回目です。
校正前のいわゆるゲラ(のちょっと製品版に近いやつかな)で、そういうのをバウンドプルーフというようなのだけれど、つまり出版社の方が先に読むやつっすね。
なので発売後のものとは微妙に違うところがあるのかも。
実は届いたのはちょっと前だったんだけれど、まだ未読です。
なかなか忙しくて、みなさんのブログにもあんまり回れていない現状が。
忙しいと言っても就活とオフ会なんだけどね。オフ会の話はまたネタ切れした時にでも……カラオケオールとかしました。
早く読まないと発売しちゃうから読めよって感じなんだけれど、まあぼちぼち読み始めます。
レビューは発売前にブログに投下しちゃうとまずい気もするね……
どうなんだろうそのあたり。
まあ発売日にでも投稿しようか。
ちなみ冊子とサインの写真は他の方も上げてたのでまあ特に問題ないでしょう。というかこれで問題になる意味がわからないけどw
なので中身に関しては公開されてる以上のことは書けないんだけれど……
まあブクログと幻冬舎の企画なので、ブクログに発売日前にレビューを置いても問題ないだろうから(わざわざURLとレビュー書いてねという文章が当選通知の紙にありましたw)、ブクログのレビューに飛べるように、後で記事書こうと思います。
内容もなかなかの大作、面白そう。期待大です。
●作品について
『ギフテッド』山田宗樹(著)
四六判上製
2014年8月下旬 発売予定
【あらすじ】
人類は進化の時を迎えた。 だが、取り残される者は、 決してそれを認めない。
25年前、アメリカ合衆国のミネアポリスに住む13歳の少年の体内に〈未知の臓器〉が見つかった。以後、同様の臓器をもつ子供たちの存在が、世界各地で確認される。
いつしか彼らは、羨望と畏れを込めて「ギフテッド」と呼ばれるようになった。
日本国内においても同様に〈未知の臓器〉の存在が認められた。だが「ギフテッド」に認定された少年少女に〈未知の臓器〉による影響は何も見られず、国の政策で多感な思春期を隔離されて送った彼らは、自らのアイデンティティを見つけられないでいた……。
自分には理解できないものに対峙する恐怖、 そして、理解できない他者を受け入れる恐怖。 恐怖は伝染し、拡大し、やがて、暴走し始める──。
アーサー・C・クラークの『幼年期の終わり』やグレッグ・ベアの『ブラッド・ミュージック』が好きな僕としては期待せざるをえないよね。
貴志祐介の『新世界より』の世界の1000年前に似てる設定かも。これもすごい好きな作品なので、やはり期待は高まる。
折角なので楽しんで読みたい。