2015~2019に読んだ本まとめ(ミステリ中心)
2015~2019に読んだ本まとめです。
おすすめの◯◯選みたいな記事ではないのですが、何かしらは誰かに刺さる作品だと思います。2010年代も終わるので自分の備忘録も兼ねてまとめてみました。
僕は一年に30冊前後くらいしか読まないので、5年分まとめて振り返ってもさして苦ではないなと思ってます。
おすすめしたいものや、一言加えたいものにはコメント入れてます!
あと当時ハードカバーだったものは、なるべく最新の文庫版に変えてます。
同じように現在絶版で電子書籍なら買えるものも一部変更しています。
併記している発売日と一致しないこともありますがご了承ください(変えるの面倒でサボりました!)
ではどうぞ!
- 2015年読了
- オリエント急行の殺人(ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
- 首無の如き祟るもの (講談社文庫)
- 瓶詰地獄
- 隻眼の少女 (文春文庫)
- 黒死館殺人事件 (河出文庫)
- 翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件 (講談社文庫)
- 螢 (幻冬舎文庫)
- メルカトルと美袋のための殺人 (集英社文庫)
- 夏と冬の奏鳴曲(ソナタ) (講談社文庫)
- 黒猫の遊歩あるいは美学講義 (ハヤカワ文庫JA)
- 痾 (講談社文庫)
- 木製の王子 (講談社文庫)
- 江戸川乱歩傑作選 (新潮文庫)
- 小説 スパイラル‐推理の絆―ソードマスターの犯罪 (COMIC NOVELS)
- 小説スパイラル 推理の絆〈2〉鋼鉄番長の密室 (COMIC NOVELS)
- 小説スパイラル 推理の絆〈3〉エリアス・ザウエルの人喰いピアノ (Comic novels)
- 小説 スパイラル~推理の絆~ (4) (コミックノベルズ)
- 女王国の城 上 (創元推理文庫)
- 女王国の城 下 (創元推理文庫)
- 哲学的な何か、あと科学とか
- サウンドノベルエボリューション2 かまいたちの夜 PlayStation the Best
- かまいたちの夜2 監獄島のわらべ唄
- かまいたちの夜×3 三日月島事件の真相
- 屍者の帝国 (河出文庫)
- その可能性はすでに考えた (講談社ノベルス)
- 記憶破断者 (幻冬舎単行本)
- 新装版 虚無への供物(上) (講談社文庫)
- 新装版 虚無への供物(下) (講談社文庫)
- 2016年読了
- 人工知能は人間を超えるか (角川EPUB選書)
- いなくなれ、群青 (新潮文庫nex)
- 神様ゲーム (講談社文庫)
- さよなら神様
- 砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない A Lollypop or A Bullet (角川文庫)
- 星降り山荘の殺人 (講談社文庫)
- 七つの海を照らす星
- アルバトロスは羽ばたかない
- 空耳の森 (ミステリ・フロンティア)
- 新装版 匣の中の失楽 (講談社文庫)
- 鴉 (幻冬舎文庫)
- ハサミ男 (講談社文庫)
- 殺す (幻冬舎文庫)
- 狂う (幻冬舎文庫)
- 葉桜の季節に君を想うということ (文春文庫)
- 狩人の悪夢 (角川文庫)
- 黒祠の島 (新潮文庫)
- 聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた (講談社ノベルス)
- 2017年読了
- 名探偵 木更津悠也 (光文社文庫)
- ジェリーフィッシュは凍らない
- 独白するユニバーサル横メルカトル (光文社文庫)
- QJKJQ
- 貴族探偵 (集英社文庫)
- 貴族探偵対女探偵 (集英社文庫)
- 人間の顔は食べづらい
- メルカトルかく語りき (講談社文庫)
- 聯愁殺 (中公文庫)
- 罪の声
- 開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU― (ハヤカワ文庫 JA ミ 6-4)
- 電氣人閒の虞 (光文社文庫)
- 安楽探偵 (光文社文庫)
- そして名探偵は生まれた (祥伝社文庫 う 2-3)
- 第二の銃声 (創元推理) (創元推理文庫)
- さよなら神様 (文春文庫)
- 弥勒の掌 (文春文庫)
- 雨の日も神様と相撲を (講談社タイガ)
- ローウェル城の密室 (ハルキ文庫)
- 扉は閉ざされたまま (祥伝社文庫)
- わたしたちが少女と呼ばれていた頃 (祥伝社文庫)
- 眩暈を愛して夢を見よ (角川文庫)
- 最後にして最初のアイドル【短篇版】
- 匣の中 (講談社文庫)
- ラミア虐殺 (カッパ・ノベルス)
- Jの神話 (文春文庫)
- 黒と愛 (ハヤカワ・ミステリワールド)
- 三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人 (講談社ノベルス)
- 7人の名探偵 新本格30周年記念アンソロジー (講談社ノベルス)
- NO推理、NO探偵? (講談社ノベルス)
- 奇偶(上) (講談社文庫)
- 奇偶(下) (講談社文庫)
- 大きな森の小さな密室 (創元推理文庫)
- 密室・殺人 (創元推理文庫)
- 厭魅の如き憑くもの (講談社文庫)
- 屍人荘の殺人
- 生ける屍の死 (創元推理文庫)
- 2018年読了
- バビロン 1 ―女― (講談社タイガ)
- バビロン 2 ―死― (講談社タイガ)
- バビロン 3 ―終― (講談社タイガ)
- 赤い糸の呻き (創元推理文庫)
- 地獄の奇術師 (講談社文庫)
- Xの悲劇 (角川文庫)
- 修羅の終わり (講談社文庫)
- 魔術師を探せ! 〔新訳版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
- 美濃牛 (講談社ノベルス)
- あなたのための物語
- 友達以上探偵未満
- 黒い仏 (講談社ノベルス)
- 金雀枝荘の殺人 (中公文庫)
- 探偵AIのリアル・ディープラーニング (新潮文庫nex)
- シンフォニック・ロスト (講談社ノベルス)
- 妖異金瓶梅 山田風太郎ベストコレクション (角川文庫)
- 合邦の密室
- 夕暮れ密室 (角川文庫)
- 奇想、天を動かす (光文社文庫)
- すべてがFになる (講談社文庫)
- グランド・ミステリー (角川文庫)
- 神戯-DEBUG PROGRAM-Operation Phantom Proof (講談社BOX)
- 赤い部屋
- 堕天使拷問刑 (ハヤカワ・ミステリワールド)
- 2019年読了
- 少女を殺す100の方法
- 1/2の騎士 (講談社文庫)
- 十角館の殺人 限定愛蔵版
- お前の彼女は二階で茹で死に
- 〔少女庭国〕
- 天帝のはしたなき果実 (幻冬舎文庫)
- 水車館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)
- 魔眼の匣の殺人
- 迷路館の殺人<新装改訂版> (講談社文庫)
- エッシャー宇宙の殺人 (中公文庫)
- そして二人だけになった―Until Death Do Us Part (新潮文庫)
- スノウブラインド
- 人形館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)
- 衣裳戸棚の女 (創元推理文庫)
- 終末少女 AXIA girls
- 霧越邸殺人事件<完全改訂版>(上) (角川文庫)
- 霧越邸殺人事件<完全改訂版>(下) (角川文庫)
- スノーホワイト (講談社文庫)
- 時計館の殺人<新装改訂版>(上) (講談社文庫)
- 時計館の殺人<新装改訂版>(下) (講談社文庫)
- 虚構推理短編集 岩永琴子の出現 (講談社タイガ)
- 虚構推理 スリーピング・マーダー (講談社タイガ)
- 黒猫館の殺人〈新装改訂版〉 (講談社文庫)
- 嫉妬事件 (文春文庫)
- 綺想宮殺人事件
- 失われた過去と未来の犯罪 (角川文庫)
- 光と影の誘惑 (創元推理文庫)
- 玩具修理者 (角川ホラー文庫)
- 忌憶 (角川ホラー文庫)
- 殺人鬼にまつわる備忘録 (幻冬舎文庫)
- 奇書の世界史 歴史を動かす“ヤバい書物”の物語
- 人獣細工 (角川ホラー文庫)
- メインテーマは殺人 (創元推理文庫)
- まとめ
2015年読了
オリエント急行の殺人(ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
アガサ・クリスティー 本 2003年10月1日
読了日: 2015-01-27
人物の描写がすばらしい。意外な犯人がフューチャーされがちだが、実は反則スレスレの展開を名作に押し上げているのは、読者を納得させるほどの感情移入できるキャラクターたちの言動描写にある。
首無の如き祟るもの (講談社文庫)
三津田信三 本 2010年5月14日
読了日: 2015-02-20
あまりの凄さに震えた。僕のオールタイムベスト1位は現在この作品。シリーズ物の3作目だが単独で読める作品。
首無死体を用いたミステリではこれを超えるものはこの先生まれないだろうと思う。 約20個の謎がたった1つの気付きで氷解するところがロジック面での最大の見所。そしてそれとは別に驚愕の展開が用意されている。因習の一族と怪しげな村、そして首無死体に多重密室、ミステリ好きには堪らない一冊。必読と言っていいほどの名作。
瓶詰地獄
読了日: 2015-02-23
今でも時々頭を過り、僕を眠れなくさせる。
文庫10ページ程の極めて短い作品ながら1928年の発表以来約100年に渡り考察がされ続けている掌編。物語は書簡形式をとっており、作品は無人島に漂流した兄妹が瓶に込めて放ったたった三通の手紙のみで構成される。
この三通の手紙という限られた情報には最大限に謎が詰め込んであり、「最も新しい手紙」から内容が明かされることによる意図的な矛盾が解釈を幾重にも分岐させる。
隻眼の少女 (文春文庫)
麻耶雄嵩 本 2013年3月8日
読了日: 2015-03-12
ミステリ初心者だと全てを理解するのにやや難解さが残る。メインテーマは後期クイーン問題。ミステリの枠組みへの壮大な問題提起は楽しみにしていいと思う。この点でこの小説は絶大な価値を持っている。トリックが無茶苦茶とか言われていることが多いが、わざとそうしているだけで、後期クイーン問題を考慮すればその点は的外れな批判だと判る。
が、後期クイーン問題の解答になっているかは微妙なところ。主題において作者らしい物語を構築していることは間違いない。
黒死館殺人事件 (河出文庫)
小栗虫太郎 本 2008年5月2日
読了日: 2015-03-16
人によるとは思うけれど、おそらく四大奇書最大の読みにくさ。個人的には大好きな一冊で、2度読了しているがもう読みたくない。過剰すぎる装飾主義と衒学主義、ゴシック趣味。後のミステリへの影響を考えると名作ではあるがミステリとして遵守しなくてはならない点もあえて壊しにかかっているアンチミステリ。もし耐えられるなら、ミステリファンには是非読んでほしい。
最近では「新青年」版が出ていて、非常に素晴らしい注釈が付いていて、挿絵も復活している。僕も3度目の再読では非常に楽しめた(3度目読んでるやんけ……)。まんがで読破でもいいと思うのでぜひぜひ。
翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件 (講談社文庫)
麻耶雄嵩 本 1996年7月13日
読了日: 2015-03-21
麻耶雄嵩のデビュー作。後のシリーズである、木更津シリーズとメルカトルシリーズ、烏有シリーズの原点となる一冊。二人の探偵、西洋風の古城、黒死館殺人事件などをオマージュしたミステリ。伏流として存在する「誰が主導権を勝ち取るか」というテーマも面白い。麻耶雄嵩の作風を凝縮した一冊。
螢 (幻冬舎文庫)
麻耶雄嵩 本 2007年10月1日
読了日: 2015-03-24
最終的な評価は麻耶作品特有の要素によって賛否分かれるが、麻耶好きには満足度は高い。後の麻耶作品や、初期の麻耶作品にも見られる要素が少しずつ含まれているような印象で、麻耶作品の教科書的な作品だと言える。その意味でミステリ好きの中で麻耶を読んだことがない人がいれば、リトマス紙的に好みかどうかを判断できる作品になっている。しかし、ミステリ自体の初心者には全く向かないのは間違いない。実に麻耶らしい。
メルカトルと美袋のための殺人 (集英社文庫)
麻耶雄嵩 本 2011年8月19日
読了日: 2015-04-11
メルカトルシリーズを読むならこれが一番スタンダード。ただし、他が極端にぶっ飛んでいるのでこれが一番落ち着いているという意味であって、本作もなかなか癖のある一冊。
夏と冬の奏鳴曲(ソナタ) (講談社文庫)
麻耶雄嵩 本 1998年8月
読了日: 2015-05-08
平成の奇書とも言えるほどの問題作。麻耶雄嵩最大の問題作と考えて良いかもしれない。衝撃の展開と前代未聞の構造、そして未だに続く考察と議論、何をとってもこれは名作であり迷作、麻耶雄嵩の最高傑作に挙げる人も多い。烏有シリーズの一冊目でもあるがメルカトルシリーズ、木更津悠也シリーズの2冊目でもある。キュビズムの薀蓄が楽しく、その壮大なストーリーへの組み込み方も見事。残された謎はある程度作中の内容から推理できるが議論の余地は未だ大きい。入手困難だが麻耶ファンなら必読。
桐璃かわいい。
黒猫の遊歩あるいは美学講義 (ハヤカワ文庫JA)
森晶麿 本 2013年9月5日
読了日: 2015-05-14
薀蓄というか知識や論理の説明が理解できなくて評価を下げるということがこの作品の場合多く起きているようだが、学問的、思考的な物語の展開や物語の再解釈のような抽象的な描写や説明は僕にとっては好きな部分で、逆にその辺りが難しいと感じる人には退屈に思えてしまうらしい。そこがこの作品の欠点になるだろう。
例えば、冒頭の『モルグ街の殺人事件』のちょっと面白い解釈や、『黒猫』の解釈、『竹取物語』を月と人の観点からその「タイトル」に言及するなど、目から鱗というか、面白い「講義」がたくさんあったのが印象的で楽しい。
痾 (講談社文庫)
麻耶雄嵩 本 1999年1月14日
読了日: 2015-06-15
ある意味シリーズの要となる作品。非常にシリーズ間のつながりが重要な一冊であり、単体で読むことは全くおすすめできない。少なくとも『夏と冬の奏鳴曲』を、できれば『翼ある闇』を先に読んでおきたい。もしこれを読むならいっその事シリーズ全作を読んだほうが良いとも言える。最もメルカトルの人間性を垣間見ることのできる作品。見どころは冒頭のあのシーン(笑)
木製の王子 (講談社文庫)
麻耶雄嵩 本 2003年8月
読了日: 2015-07-05
最強のアリバイ表が登場する作品。現在(2017年)シリーズで最も新しい長編作品だがシリーズとしてどこまでの進捗なのかさっぱりわからない。下手するとこれでシリーズ終了なのでは、とも思わないでもないが、願わくば続きが読みたい。というか絶対読みたい。頼むよ麻耶先生……。内容はなかなか凄まじいが、今までのシリーズ作品と比べればかなり普通の作品(麻痺している人)。
江戸川乱歩傑作選 (新潮文庫)
江戸川乱歩 本 1960年12月27日
読了日: 2015-07-08
乱歩作品はやはり世界観を楽しむのが良いと思う。気味の悪さや幻想的な雰囲気とか叙情的な描写とかスリルのある舞台とかそういう一つ一つの個性が非常にまとまりのある空気感として読者に伝わるのが面白い。
キャラクターも癖があって面白く、犯人や脇役も、主役のように目立っていて楽しい。乱歩という作家を知るには良い短編集であり、まさに傑作選といった内容だった。
小説 スパイラル‐推理の絆―ソードマスターの犯罪 (COMIC NOVELS)
城平京 本 2001年3月
読了日: 2015-08-15
小説スパイラル 推理の絆〈2〉鋼鉄番長の密室 (COMIC NOVELS)
城平京 本 2002年3月
読了日: 2015-08-19
小説スパイラル 推理の絆〈3〉エリアス・ザウエルの人喰いピアノ (Comic novels)
城平京 本 2003年3月
読了日: 2015-08-22
小説 スパイラル~推理の絆~ (4) (コミックノベルズ)
城平京 本 2004年3月31日
読了日: 2015-08-24
大好きな漫画『スパイラル~推理の絆~』のノベライズ。スパイラルについてはいくらでも語れるのだがこのノベライズは、厳密にはノベライズではなく単体で読める短編作品になっている。これができるのも漫画原作者が小説家でもあるというところが大きいだろう。
今ならやっと小説家としての城平京のことを紹介できる。いままでは『名探偵に薔薇を』を勧める時にかなり苦戦していたのだが、今は小説家としても『虚構推理』という名作を引き合いに出せるだろう。
女王国の城 上 (創元推理文庫)
有栖川有栖 本 2011年1月28日
読了日: 2015-09-06
女王国の城 下 (創元推理文庫)
有栖川有栖 本 2011年1月28日
読了日: 2015-09-06
言わずと知れた学生アリス4作目。
事件の難解さは前作『双頭の悪魔』より遥かに簡単であるが、その推理の導き方、筋道が少しでもズレると真相がぼやけてしまい、思いの外読者への挑戦に対する完全な勝利は難しいものとなっている。
哲学的な何か、あと科学とか
飲茶 電子書籍 2006年11月30日
読了日: 2015-09-09
厳密には間違っていたり浅かったりする説明が多いと聞くが、興味を持つきっかけには十分優しい面白い本です。
サウンドノベルエボリューション2 かまいたちの夜 PlayStation the Best
ゲーム PlayStation 1998年12月3日
完了日: 2015-10-14
かまいたちの夜2 監獄島のわらべ唄
ゲーム PlayStation2 2002年7月18日
完了日: 2015-10-14
かまいたちの夜×3 三日月島事件の真相
ゲーム PlayStation2 2006年7月27日
完了日: 2015-10-14
有名なかまいたちシリーズ。
特に1作目と2作目が好きです。
屍者の帝国 (河出文庫)
伊藤計劃 本 2014年11月6日
読了日: 2015-11-01
この作品は伊藤計劃の長編第4作として刊行される予定だったが、それは2009年の伊藤夭折により幻と消えた。それを盟友円城塔が、伊藤のプロットと「試し書き」の冒頭約30枚を引き継いで完結させた小説だ。
その可能性はすでに考えた (講談社ノベルス)
井上真偽 本 2015年9月10日
読了日: 2015-11-11
奇跡を証明するためにあらゆる人為性を排除する探偵。一つの事件に対し個性的なキャラたちが自分たちの推理を披露していく、それに対し主人公上笠丞はその推理の間違いを指摘し、奇跡を証明しようとする。本来とは逆を行く展開が非常に面白い。多重解決の傑作。
記憶破断者 (幻冬舎単行本)
読了日: 2015-11-21
「自分の記憶は数十分しかもたない」衝撃の警告文から始まる本作は、新しい記憶を長期記憶に移行できない前向性健忘症の主人公の物語だ。そして彼は今、記憶を改竄する超能力を持つ殺人鬼と戦っている。 ……とこの時点で抜群に面白い設定だが、最強の殺人鬼とその能力に最も相性が悪い健忘症の主人公という組み合わせが複雑でスリリングな展開を創り出していく。目の前の男が殺人鬼かどうかも忘れてしまうのだから。 そしてこの物語にも「記憶」と「意識」というテーマがある。記憶の代わりに記録を残すなら、記録こそが意志なのかもしれない。
新装版 虚無への供物(上) (講談社文庫)
中井英夫 本 2004年4月15日
読了日: 2015-12-14
新装版 虚無への供物(下) (講談社文庫)
中井英夫 本 2004年4月15日
読了日: 2015-12-14
ベスト級の傑作。日本ミステリ三大奇書の一つで、アンチミステリという言葉が本来指し示す唯一のミステリ。その酩酊感とペダンティックな内容は奇書好きにはたまらない。そして結末はミステリ史に名を残すもの。現実が虚構に飲み込まれ、すべてのミステリが本作を機に一度死んだとも言える。ミステリファンなら絶対に読んでおきたい名作。
2016年読了
人工知能は人間を超えるか (角川EPUB選書)
松尾豊 電子書籍 2015年3月10日
読了日: 2016-06-20
制作中の創作の資料として。
そして未だ完成していない(笑)
非常にわかりやすい。
いなくなれ、群青 (新潮文庫nex)
河野裕 本 2014年8月28日
読了日: 2016-06-23
脱出不能だけど生活に困らないライフラインが確保された島で暮らす人たちの青春ミステリ。いい意味で現実感のない詩的な世界だけれど、抽象的すぎず具体性のある描写で島の雰囲気と登場人物たちの性格を書いている。続編を読まないと根本の謎は解明されなそうだし、続編はそのうち読んでおきたい。個人的には思考が似ていて主人公の七草の気持ちが痛いほど解る。人は感情的だからこそロジカルなんだなぁ。全体を通して詩的で静かに沈むような文章が綺麗。
神様ゲーム (講談社文庫)
麻耶雄嵩 本 2015年7月15日
読了日: 2016-06-30
子供向けレーベルというのはほとんどネタだろう(笑) こんな暗黒のミステリを面白がって読めるのはミステリファン位のものだと思う。ロジックも意外としっかりとしていて、普通のミステリとして読んでも遜色ない、しかしラストはまさに麻耶雄嵩、えげつない……(笑)
さよなら神様
読了日: 2016-07-05
神様により冒頭に犯人が指定される、倒叙ミステリに近い連作短編集。倒叙と違うのはどうあっても犯人が確定していることだが、これが非常に設定として面白い。銘探偵を更に極端にしたようなこの設定を上手く生かした傑作。ラストは必見(笑)
砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない A Lollypop or A Bullet (角川文庫)
桜庭一樹 本 2009年2月25日
読了日: 2016-07-08
打ちひしがれます……
星降り山荘の殺人 (講談社文庫)
倉知淳 本 1999年8月10日
読了日: 2016-07-23
章ごとに作者が注釈やヒントを放り込んでくるという徹底的にフェアな犯人当てミステリになっている。しかしそれでも騙されるのがこの作品で、なかなか見事に伏線とミスリードを仕込んでいる。
当時は銘探偵じゃなかったので負けました。
七つの海を照らす星
七河迦南 本 2008年10月
読了日: 2016-08-06
爽やかに現代でも続く社会問題を問題提起した日常の謎ミステリ。ロジックと心理描写が光る。かなりの大業を仕掛けていて、個々の短編のレベルはそこそこくらいの印象だが、仕込まれた仕掛けが解放される段階に至ると非常に痛快な衝撃が待っている。ミステリとしては非常に優れた連作短編集。
アルバトロスは羽ばたかない
七河迦南 本 2010年7月27日
読了日: 2016-08-09
七河迦南の最高傑作、噂に違わぬ傑作なのでミステリファンなら読んでおきたい一冊。前作を読んで置くと、心情描写も優れていることが解る。かなり細かい表現まで作り込まれていて、前作を超える衝撃過ぎる痛烈なサプライズに繋がっている。ここまで読んだなら、ぜひ次作も読んでおくべきだろう。
空耳の森 (ミステリ・フロンティア)
七河迦南 本 2012年10月31日
読了日: 2016-08-11
正直、最初は『七つの海を照らす星』『アルバトロスは羽ばたかない』のおまけ程度に考えていたのだけれど、これは前2作を読んだ人は絶対読んだほうがいい。油断するとびっくりするくらい出来がいい。むしろシリーズファンはこれを読まないと非常に損をすることになる。
新装版 匣の中の失楽 (講談社文庫)
竹本健治 本 2015年12月15日
読了日: 2016-09-22
『虚無への供物』の後に読むとほんとに工夫されてるなと思う。別の角度から再表現してるというか。虚無への供物もそうだけれど、酩酊感で作中に気を取られているところに終盤のラッシュがあって、正気に戻って現実世界に立ち返ると、現実にいながらにして作中に巻き込まれてる。哲学の思考実験とか、不確定性原理とかスリット実験とか、ラプラスの魔とか、そういう知識を面白がって中学くらいから調べて読んでいた無意味と思われるような趣味が『匣の中の失楽』で普通に語られているのがほんとに嬉しい。四大奇書読破の最後の一冊に相応しかった。
鴉 (幻冬舎文庫)
麻耶雄嵩 本 2000年10月1日
読了日: 2016-10-19
素晴らしい。シリーズの中ではかなり普通な部類(麻痺しています)だが、それでもやはり麻耶作品で、攻めた作りになっている。シリーズとしてはメルカトルのバックボーンが気になりすぎて眠れなくなりそう……彼は一体……。ミステリとしても優れた一作。
ハサミ男 (講談社文庫)
殊能将之 本 2002年8月9日
読了日: 2016-10-25
トリックが読めてしまうこと以外は大好きだった。目立って悪い点は見当たらない。キャラ、構成、言葉選び。どこをとっても良質。ハサミ男という異常な殺人者をメインキャラクターに置いているのだけれど、シリアルキラーやサイコパスに関する知識をはっきりと説明せずに引用してくるあたりがニヤリとさせる。作中で引用癖と表現される蘊蓄の部分も面白い。部屋が街が人が職場が季節が、はっきり想起させられる書き方で、実際に行動しながらその都度文章に落とし込んでいるんじゃないかというような感じ。文章のリズムが個人的にはすごいマッチした。
殺す (幻冬舎文庫)
西澤保彦 本 2011年10月12日
読了日: 2016-10-30
フーダニットでもあるけれど、僕はどちらかというとホワイダニットの傑作かなと思う。情報がうまく散りばめられていて、ミッシングリングが絶妙なタイミングで開示されるのが魅力的。現代の社会的病理をうまく表現したキャラクターがいい。動機が理解できないとか後味が悪いという人もいるけれど、僕は殺人の動機なんか本来理解できないはずであると思うし、後味が悪いことは欠点では決してありえないと思う。あの絶望感は理不尽は、あるべくしてあると思う。非常に好きな作品。
狂う (幻冬舎文庫)
西澤保彦 本 2013年10月10日
読了日: 2016-11-01
倒叙でもあり、読者は犯人を知った上で読み進めるが、どうにも動機が判明しない。それどころか犯行においてのいくつかの不可解な行動も理由がわからない。 最後まで「理由」が謎である事が、読ませる小説になっている。そのミッシングリンクが明かされる瞬間が非常に気持ちがいい。 絶望としかいいようのない展開で、やはりこれもまた絶望を味わうためのミステリ。悲劇でしかない。ある意味では人間の深層の病理をかなり繊細に描いているようにも思える。
葉桜の季節に君を想うということ (文春文庫)
歌野晶午 本 2007年5月10日
読了日: 2016-11-12
ミステリの要素の一つとして、読者を騙そうという気概が凄まじい。まさかアレが4つもあるとは。細かいところを見ていくとかなり作り込まれている。まずメイントリックを隠し通すための技術が凄まじい。サブトリックも他のミステリならメインに持ってきてもおかしくないような秀逸なものが多重で仕込まれていて、これもメインを隠しつつ進行して行って最後に解放するっていうのが読んでいてすんなりいくけれど書くとなると途方も無い綿密な作り込みが要ると思う。名作であることは違いない。
狩人の悪夢 (角川文庫)
狩人の悪夢 「火村英生」シリーズ (角川書店単行本)
読了日: 2016-12-10
文芸カドカワ1月号にて最終回、犯人の意外性はあまりないのだけれど、やはりあのロジックの持って行き方は秀逸、必然性を積み立てて一人に絞る。探偵役と犯人を狩人と獲物に見立てた展開と、アリスの役回りが良かった。ゲストキャラの江沢鳩子さんが好き。作家アリス他も読んでみたい
黒祠の島 (新潮文庫)
小野不由美 本 2007年6月28日
読了日: 2016-12-18
良い点としてはジャンルが凄い好み。宗教的な面でもそうだけれど、馬頭観音を持ってきてからの解豸とか、黒祠のシステムを用いた非物理的クローズドサークル下での特殊ルールミステリというか、陳腐そうに見えてかなり攻めてる。
聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた (講談社ノベルス)
井上真偽 本 2016年7月7日
読了日: 2016-12-31
仮説の穴とややの御都合主義、あと今回に関しては奇蹟とするにはやや神秘性が欠けることとか、不満点もあるんだけど、前回も細かいところは甘かったので許容範囲。
良いところは今回はフーダニットが本格的に加わったところ。やはりこのシリーズは読みやすいし、読んでいて面白い。前作同様多重解決の一つ一つのピースはやや弱いが総合的には収まりの良い本格ミステリになっている。ロジックで穴を埋めていく様子がやはり何より楽しい作品だ。
2017年読了
名探偵 木更津悠也 (光文社文庫)
麻耶雄嵩 本 2007年5月10日
読了日: 2017-01-16
ミステリへのアンチテーゼというか「ねじれ」の表現が絶妙。最後の数ページ最高。普通のミステリを知っていれば知っているほど麻耶雄嵩のミステリはそのねじれを体感できる。このシリーズのワトソン役は最高だ。
ジェリーフィッシュは凍らない
市川憂人 本 2016年10月9日
読了日: 2017-01-23
独自の設定である気嚢式浮遊艇の普及した近過去の世界が面白い。ただ本格かというと疑問。『そして誰もいなくなった』を踏襲して本格の要素を使っているが、推理要素は少なめ。推理よりも新事実から発想で解決していくので本格の雰囲気からはどんどん外れていく。本格のガジェットがあまり活かされない。犯人が用いたトリックや手段は最初から数通りに絞られ、サプライズの作り込みが弱い。むしろ情景や優美さ人間臭さドラマチックさ、そのあたりが強い。ますます本格にこだわる必要性がなく、綺麗なストーリーモノのミステリとして読む方が楽しい。
独白するユニバーサル横メルカトル (光文社文庫)
平山夢明 本 2009年1月8日
読了日: 2017-02-13
残酷さと静謐さと狂気にユーモアでペダンティックな描写、今まで読んでなかったのが勿体無い。『Ωの聖餐』がいちばん好きだった。『オペラントの肖像』『卵男』も好き。文章とリズムが本当に素晴らしい。ジャンルはバラバラでも特有の文体で語られる不気味でどこか静謐で繊細な表現は惹き込まれる。
QJKJQ
佐藤究 本 2016年8月9日
読了日: 2017-02-26
有栖川氏の「平成のドグラ・マグラ」という評は言い得て妙。『ドグラ・マグラ』の構造と読後感によく似ている。奇書の酩酊感を現代の丁寧さと綺麗さのニーズみたいなものでブラッシュアップした感じで、ある意味昭和の奇書のいい部分を打ち消しているとも取れなくはない。それでもやはり奇書風で、良いも悪いも含め「平成の」なのかなと思う。物語の前提条件、登場人物と彼らの置かれた環境から、全く先が予想できない。予想外の展開、良い意味での不安定さで読ませた後にあのラスト。ラストが綺麗に収まり過ぎている感はあるが、個人的には好きだ。
貴族探偵 (集英社文庫)
麻耶雄嵩 本 2013年10月18日
読了日: 2017-03-04
『名探偵 木更津悠也』の方がまだオチのつけ方とか設定の活かし方がうまかった。『貴族探偵』も面白いとは思うが、内容的にハウダニット重視になりがちだから、その点でクオリティがやや弱め。麻耶作品では凡庸な部類か。 短編『こうもり』は麻耶短編では最高クラスの出来、ほとんどこの作品に頼っているようなものかもしれない。 ドラマ化によって成功した稀有な例だと思う。原作も細かな良い点はたくさんあるがドラマが非常に秀逸。ミステリファンが楽しめる実写化が為されている。
貴族探偵対女探偵 (集英社文庫)
麻耶雄嵩 本 2016年9月16日
読了日: 2017-03-10
前作の方が推理面で遥かに説得力があるが、これは作中のとある趣向にこだわっているが為であって、むしろ趣向の面白さからすると本作の方がアクロバティックな推理を楽しめる。とはいえ、愛香の推理がかなり危ういと言うか悪く言えば「しょぼい」のが難点。かと言って使用人の推理が冴えているかと言うとこちらもかなり危ない橋を渡っている感が拭えない。面白いがやや勿体無い感じのする本作。多重解決において、あの「縛り」は推理面で詰めが甘くなるからなぁ。多重推理としては『その可能性はすでに考えた』や『虚構推理』にはちょっと勝てない。
人間の顔は食べづらい
白井智之 本 2014年10月31日
読了日: 2017-04-05
面白かった。設定がかなり奇抜で楽しい。やや設定の特殊さが首を絞めているところもあるのだけれど、基本的には特殊状況下のミステリとして設定が綺麗に生かされている。推理面ではかなりボロがあるけど、多重解決もののつじつま合わせの妙が光っている。正直特殊状況下だし推理の瑕疵については見逃せるかな、と思う。逃げ切りみたいなもので、最後の最後で説明のし忘れがあるくらいで他は気にならない。ロジックでたどり着ける内容にも巧妙に隠された部分があり総合的には見事なミステリ。
メルカトルかく語りき (講談社文庫)
麻耶雄嵩 本 2014年5月15日
読了日: 2017-04-17
屈指の名作『答えのない絵本』のためにその前のすべての短編を捧げているといっても過言ではない一冊。個人的な所感ではには『答えのない絵本』は麻耶雄嵩の短編では最高傑作、『収束』はそれに準ずる質の高さを誇る。ラストの『密室荘』と『九州旅行』はファンサービスとしては外せない。最初の短編はこの一冊のルール説明と見ていいだろう。アンチミステリの更に奥地アンチ〇〇〇〇〇〇における完全なる最高地、禁じ手の本格ミステリだと思う。『答えのない絵本』は後期クイーン問題も含めた隙を潰しきった堅牢なロジックも感嘆に値する。
聯愁殺 (中公文庫)
西澤保彦 本 2010年9月22日
読了日: 2017-05-21
西澤保彦『聯愁殺』読了。多重推理、多重解決、とにかく冒頭で明示される事件について、ほとんどのページを割いてユニークな面々が推理合戦をする。そして氷川透の解説がまた名文。メタミステリの真の定義について触れていて非常に納得のいく解説をしている。そして、ラストの展開、ほんと最高だった。
罪の声
塩田武士 本 2016年8月3日
読了日: 2017-05-26
実際の未解決事件「グリコ・森永事件」とほぼ同じ内容の「ギン萬事件」を再調査する新聞記者と、事件関係者の親族であるテーラーが、段々と真相に近づいていく。フィクションとノンフィクションのバランスが素晴らしい。面白かった、グリコ森永事件は興味があってよくWikipediaとか読みあさってたから展開覚えてて楽しかった。ほんとに事件の概要はほぼ同じ。名前を変えただけで、完全にグリ森事件をベースにしていて、そこからフィクションとして完成させているのが凄い。テンポが良く一気読みできる。
開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU― (ハヤカワ文庫 JA ミ 6-4)
皆川博子 本 2013年9月5日
読了日: 2017-06-13
18世紀のロンドンが舞台のミステリ。皆川博子は1929年生まれの高齢ながら活躍する作家。本作は2012年の本格ミステリ大賞を受賞。解説は有栖川有栖、逆に『江神二郎の洞察』では解説が皆川博子。精緻な描写力と、隙のない伏線回収が見事。18世紀のロンドンなど誰も知らないが妙に現実味がある。皆川博子、実は300歳なんじゃないか・・・・・・。説明的になりがちな文化の描写が自然で、それでいて登場人物はきっちり書き分けられ、登場人物が全員生きている。翻訳のような文体が日本人の西洋のイメージをそのまま体現している。美しいミステリ。
電氣人閒の虞 (光文社文庫)
詠坂雄二 本 2014年4月10日
読了日: 2017-06-22
非常に秀逸な技巧の施されたミステリ。架空の都市の架空の都市伝説をうまくディティールまで表現して読者に理解させ、そこから現出する疑問と、「ミステリ」であるが故に生じるミステリ読者であるからこそ思い至る猜疑心との擦り合わせが非常に巧妙。求めうる「解答」と伏線とが噛み合わず展開がいつになっても予想できない、そしてそうこう思い巡らせているうちに不意に衝撃の真相に襲われることになる。目眩のする様な呆然となる真相は必見。
安楽探偵 (光文社文庫)
小林泰三 本 2016年2月9日
読了日: 2017-06-25
小林泰三を読むと「くそ〜〜」という気の抜けた声が出てしまう僕だが、本作も非常にこの作者らしいミステリ。今回の見所は、ミステリファン向けの逆転の一撃(読めばわかる)、小林泰三らしい極端に論理的な屁理屈のような噛み合わない会話、悪魔の証明やオッカムの剃刀を取り入れた展開、鋭く尖ったブラックユーモア、そして安楽椅子探偵へのアンチテーゼ。とにかく会話が面白くてにやけてしまう、それでいて展開はミステリファンを獲物にした技巧的なもので、連作短編ならではの結末もなかなか収まりがいい。捻くれたミステリファンに捧げたい。
そして名探偵は生まれた (祥伝社文庫 う 2-3)
歌野晶午 本 2009年2月6日
読了日: 2017-06-29
表題作『そして名探偵は生まれた』は雪の密室。探偵と助手の関係が面白い。トリックが杜撰だが名探偵をテーマとした皮肉が良い作品。
『生存者、一名』は孤島の密室。サバイバルものであり謎解きでもある。フェアでない一文が残念だが、一気に読ませる魅力的な良作。
『館という名の楽園で』は館の密室。これが一番良かった。王道のミステリ、読者への挑戦もある正当でフェアなそれでいて惹き込まれる傑作。
『夏の雪、冬のサンバ』も雪の密室。こちらも密室モノとしてなかなか良い良作。
全話共通してミステリファンなら大好きな要素が散見する一冊。
第二の銃声 (創元推理) (創元推理文庫)
アントニイ・バークリー 本 2011年2月12日
読了日: 2017-07-04
笑える程に堂々と行使された技巧に、思わず天を仰いだ。トリックも犯人も“勘では”当ててはいたのだが、色んなヒントの見逃しがありしてやられたという感想の方が強い。プロローグとエピローグの合間に語り手ピンカートンの草稿が差し込まれる構成だが、全編に渡り堂々と伏線とヒントが貼られていたにも関わらず、後半の怒涛の展開に振り回され推理できる状況ではなかった。本当に30年代の作品とは思えない見事な傑作。ピンカートンも実に筋の通った人物で面白い。アーモレルと結婚したい・・・・・・(笑)
さよなら神様 (文春文庫)
麻耶雄嵩 本 2017年7月6日
読了日: 2017-07-06
弥勒の掌 (文春文庫)
我孫子武丸 本 2008年3月7日
読了日: 2017-07-09
かなりシンプルな部類のミステリなのにあっさり騙されてしまいショックだった。いつもの自分ならすぐ気づいたのに!誰かとこの悔しさを分かち合いたい(笑) さて、内容としては教師と刑事がそれぞれ妻の失踪の謎と妻を殺した犯人の捜索をし、その過程で新興宗教「弥勒の掌」に疑惑を向け、協力して捜査していくというもの。 しかし本格ならではの要素もあり、やはり本格の作家の為せるものだなと思う。メイントリックも注目だが、気付いてない人もいそうだが実は細かな技巧が施されている。 真相の語りもかなり珍しい。最後の一行、僕は大好き。
雨の日も神様と相撲を (講談社タイガ)
城平京 本 2016年1月19日
読了日: 2017-07-12
城平京はミステリ作家であり漫画原作者でもあるのだが、まさに作者ならではの漫画的かつ小説的な面白さがある。伝記、ミステリ、ファンタジーをうまく融合し、ロジカルに物語を展開している。個人的には民俗学を学んでいたので作中の軸の一つに「まれびと」がモチーフとして用いられているのが凄く良かった。神話、伝承との符合も丁寧。
ローウェル城の密室 (ハルキ文庫)
小森健太朗 本 1998年5月
読了日: 2017-07-17
『ローウェル城の密室』という少女漫画の世界に入り込んでしまった二人の少年少女が密室殺人事件に巻き込まれる話。読後感が何かに似てるなと思ったら『イニシエーション・ラブ』の時に似てる。序盤でトリックが判ってしまうと、その後の展開や描写が全て確認作業になってしまうところがまさしく同じだ。トリック一点に全てを捧げたような作品なので気づいてしまうと後は大したものではないのが非常に残念なところ。しかし設定やキャラクターの造詣など面白い点もある。変化球のミステリであることは確かだろう。唯一無二の密室に素直に騙されよう。
扉は閉ざされたまま (祥伝社文庫)
石持浅海 本 2008年2月8日
読了日: 2017-07-18
面白くて一気読みしてしまった。倒叙モノならではの犯人の恐れと応戦、探偵役の捜査と追求、ロジカルに徹したストーリーの運び方、どれをとっても質が高い。 唯一ケチをつけるなら碓氷優佳と伏見以外の人物が少々間抜けで、優佳の指摘の幾つかは誰かが気づいてもよさそうなモノだ。だが本当にそれくらいしか欠点がない。 伏見には共感するところが多く自分もきっと同じような思考で行動するなと思う反面、優佳の気付くポイントにも察しが付くので「気づけ!怪しまれるぞ!」とつい応援をしてしまう。感情面でも、優佳に対する心情は痛いほど解る。
わたしたちが少女と呼ばれていた頃 (祥伝社文庫)
石持浅海 本 2016年3月11日
読了日: 2017-07-24
面白かった。普通の青春連作短編ミステリとしてもなかなかだが、『扉は閉ざされたまま』を読んでいると、淡々と論理的に犯人を追い詰めていた碓氷優佳がどんな高校生時代を送ったのかが解るようになっている。やはりロジックの怪物のような振る舞いの片鱗は見せるもののその衝撃は全てが終わった後に気付かされる。第一短編のロジックと真相には特に驚かされるが、最終話にかけての展開も素晴らしい。そして最後の1行は様々な想いの凝縮された1行で印象深い。
眩暈を愛して夢を見よ (角川文庫)
小川勝己 本 2010年4月24日
読了日: 2017-07-31
平成の奇書。第一部までは先の展開を予想できるくらいには解りやすいのだがそれ以降は最後の1ページまでまさしく眩暈のするような展開と構造。『ドグラ・マグラ』のような夢現の混乱、『虚無への供物』のような現実とフィクションのメタ的接続、『匣の中の失楽』のような構造的幻惑、『夏と冬の奏鳴曲』のような唐突な収束。作中にも出て来るが『ブラッド・ミュージック』を思わせる「侵食」は優美さと同時に頭痛をもたらす。周到で意図的なサンプリングが逆に個性になっており、終始計算された歪みと狂気の演出になっている。衝撃の怪作ミステリ。
最後にして最初のアイドル【短篇版】
草野原々 電子書籍 2016年11月22日
読了日: 2017-08-15
……凄い。アイドルというものに対する熱意を凄絶に捻くれて再構築した作品。もしもの未来として非常に楽しく、ある意味ネジの飛んだ異常な進行とまさかの展開。SFとして良い短編作品ではあると思う。最終的には『インターステラー』のような壮大な世界論に発展。タイトルの回収も素晴らしい。小説としてはどうなのかという点もないではないがアイディアに関してはかなりぶっ飛んだ独特の面白みがある。
匣の中 (講談社文庫)
乾くるみ 本 2006年5月16日
読了日: 2017-08-20
本書は『匣の中の失楽』のオマージュである。その病的なまでの凝り方と作り込みの精緻さを以てすると本家に並ぶ傑作だと思う。謎や暗合、そして暗号、それらの多さは読む人を選ぶ衒学の極みであるが、本家が好きなら必読の面白さである。謎はメインどころは明かされるものの他は読者に委ねられるため、読了後からが「本番」である。提示された暗号以外にも小さな仕掛けが多数あるので気付かないものも多いかもしれない。しかし明らかに放置されている分だけでも暗号を全て解くと作中の結末を凌駕する驚天動地の結末が現れる。
ラミア虐殺 (カッパ・ノベルス)
飛鳥部勝則 本 2003年10月21日
読了日: 2017-08-28
とにかく「すごい」としか言えない。良くも悪くも破格、「背徳の本格(インモラルパズラー)」というのは言い得て妙である。まず冒頭からして異色、さらにいわゆる「雪山の山荘モノ」のベタな構図に対して登場人物たちの言動はあまりに異常で、本格の本格たるガジェットを備えながらも随所に違和感や異常さを常に配置している。
登場人物たちが全く協力する気がないのも笑える。
最大の見所であり最大の趣向に関してはネタバレなしでは全く触れることができないが賛否両論の要素ではあるだろう。しかし一方でその部分が構成美に欠かせないようにも思えるため、個人的には良いのではと思う。
Jの神話 (文春文庫)
乾くるみ 本 2008年11月7日
読了日: 2017-08-30
面白い・・・・・・けど頭おかしい(笑) 息抜きで読んだらとんだ問題作だったが非常に楽しめた。本作はミステリとしては微妙なところではあるとは思うが小説としては見事なリーダビリティで、退屈しない。無茶苦茶なラストに向けて序盤から丁寧に伏線を張っているのだが、如何せん終盤が頭おかしすぎてそんなことはどうでもよくなる。しかし予想できないラストも辻褄合わせとしては悪くない。タイトル通り、神話に言及するあたりは感心する。Jの正体には気付いたが、気付きたくなかった(笑) 大真面目にこんなネタを披露できる作者に脱帽。
黒と愛 (ハヤカワ・ミステリワールド)
飛鳥部勝則 本 2010年9月22日
読了日: 2017-09-04
「計算された狂気」とも言うべき作品。作中の狂気は最終章で完全に弾け、エピローグで美しく収斂する。最後の一文はあまりに美しく、その為に本書の独特な構成が組まれたと見ていいと思う。驚くべきは探偵亜久の犯人の名前「のみ」の指摘であり、これは全体の三分の一程の段階で行われる。そこから犯人の視点での回想と全編に登場する示門黒という女子高生の異常性と偏執生を描く。黒という人物が如何に犯人達にとって偏狂的な愛情を注ぐに値する人物なのかが語られる。そして強烈なトリックの開示と最終章、エピローグの静謐な伏線回収は見事。
黒ちゃんかわいい。
三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人 (講談社ノベルス)
倉阪鬼一郎 本 2009年9月8日
読了日: 2017-09-11
馬鹿だなぁ(笑) もう「ロリン」とかめちゃくちゃ笑いました。さて、谷を隔てた二つの館「黒鳥館」と「白鳥館」で起きる密室殺人というのがほぼこの小説の全てだ。読んでもらえればわかるのだが序盤から妙な違和感が常にある文章になっている。胡散臭さは抜群でただ一見すると何がおかしいのか判らない。読み進めることで違和感の幾つかには察しがつくだろう。ヒントと伏線の量は過去類を見ないレベルの大量さなので嫌でも気付いてしまう。それでも最後には斜め上の無駄すぎる努力の浪費具合に笑い感心し嘆息してしまうだろう。まさにバカミスだ。
7人の名探偵 新本格30周年記念アンソロジー (講談社ノベルス)
綾辻行人 本 2017年9月7日
読了日: 2017-09-14
新本格第一世代の豪華作家陣の書き下ろしで、入門編と言えるほどに「らしい」短編が揃っている。
麻耶雄嵩の『水曜日と金曜日が嫌い』はメルカトル新作で相変わらずの銘推理、最後の一行が衝(笑)撃的。
山口雅也は読ませる文に落語のアレンジ、我孫子武丸『プロジェクト:シャーロック』今回のベスト級で「名探偵」のテーマに相応しい、有栖川有栖は安定した本格の手本、法月綸太郎は軽快な机上の推理、歌野晶午『天才少年の見た夢は』はいつもの彼らしい展開、名作。
綾辻行人『仮題・ぬえの密室』ここでしか成立しないミステリファンへのギフト。
NO推理、NO探偵? (講談社ノベルス)
柾木政宗 本 2017年9月7日
読了日: 2017-09-19
評価の難しい作品。メフィスト賞の問題作という触れ込みだが、逆にメフィスト賞でしか日の目を見なかったかもしれない。終盤までかなりキツめの出来の悪いコントのような会話と地の文が続きメタ発言が連発される。196ページ以降の展開は一気に新境地に突き抜ける。その点は評価に値する。しかしそこまでがあまりにナンセンス、個人的には趣向は好きだがもっとうまく仕上げて欲しかった。最後の展開は良く出来ていて、ある種の試みとして成功していると言っていいかもしれない。正直なところ同人誌でやれ、と思わないでもないが、ミステリの多様性としてこんな作品の一つも世に出ない世界の方がよほど不健全なようにも思う。とりあえずは好意的に捉えたい作品。
奇偶(上) (講談社文庫)
山口雅也 本 2006年10月14日
読了日: 2017-10-07
奇偶(下) (講談社文庫)
山口雅也 本 2006年10月14日
読了日: 2017-10-07
『ドグラ・マグラ』『黒死館殺人事件』『虚無への供物』『匣の中の失楽』に連なる第五の奇書。四大奇書を読解していれば、本書がそれらとテーマを同じくした傑作であることは理解できるはず。奇書には各々個性があるが本書は「偶然」を主軸に、徹底的に論じている。同時に偶然はミステリのタブー、アンチミステリとしても奇書の系譜に連なる。作中作も奇書の遺伝子だ。易学に、シュレーディンガーの猫や不確定性原理の量子力学、ユングのシンクロニシティ、確率論。衒学的部分も説明がうまく比較的容易に理解できる。奇書に真っ向から挑んだ傑作。
大きな森の小さな密室 (創元推理文庫)
小林泰三 本 2011年10月22日
読了日: 2017-10-15
七つのミステリのお題を集めた短編集。犯人当てや倒叙、バカミスにSFミステリ、テーマが先に明示されたところに一筋縄ではいかない小林泰三ワールドが炸裂する。バカミスの『更新世の殺人』はバカすぎて笑う。あり得ない謎にとんでもない解決。そしてそこからの『正直者の逆説』の流れが素晴らしい、こちらはテーマを伏せてあり、趣向が突き抜けていてかなり好みだった。各作品とも他作品に登場する人物がいたりして、小林泰三入門編と言えるだろう。巻末の『小林泰三ワールドの名探偵たち』で気になったキャラを追うのも楽しみが広がる。
密室・殺人 (創元推理文庫)
小林泰三 本 2014年1月22日
読了日: 2017-10-17
細部に至るまで計算され尽くした作品。クトゥルフ神話まで引き出す作者のこだわりと精緻な構成が見事。小林泰三ファンならお馴染みのキャラが共通して関係してくるのも嬉しい。事件は密室殺人ならぬ「密室・殺人」。窓もドアも施錠された部屋と、墜落死体という分断された謎に焦点を当て、その解決に至る過程は作者ならではのユーモアに溢れ、解決そのものは地味ながらも良くできている。そしてその先に潜む衝撃の真相はこの物語の全てを書き換えてしまう。形容し難い美しく切なく不安定な余韻はジャンルそのものが「小林泰三」であると思わせる。エモい!
厭魅の如き憑くもの (講談社文庫)
三津田信三 本 2009年3月13日
読了日: 2017-10-29
今まで読んだどのホラーよりも恐ろしく、そしてミステリとしての驚きは最上級そのそれである。因習の蔓延る閉鎖的な村に憑物筋の家、山神様への信仰と【厭魅】と呼ばれる最も悍ましき存在。そして村中に佇む【カカシ様】。そんな世界観の中で起きる連続殺人に民俗学の見地から分析を加え真相に迫る刀城言耶。物語は日記や記述録などの複数の異なる視点から描かれることで複雑な様相を呈する。ミステリとしては真相に届きそうで届かず、そうこうしているうちに強烈な仕掛けが明らかになる。そしてホラーとしての結末は、解決のその先に尾を引き……
屍人荘の殺人
今村昌弘 本 2017年10月12日
読了日: 2017-11-18
新人賞作品としては稀に見る傑作。鮎川賞はややピンボケした本格もあるが今回は端正な本格推理ものとして疑いようがない。設定の秀抜さとリーダビリティの高さは今作を唯一無二の個性的な作品にしている。突然の「アレ」からのクローズドサークル、そして殺人事件、更にその解法は美しい消去法推理、フー・ハウ・ホワイダニットを丁寧に説いているのも素晴らしい。登場人物が覚えやすいよう工夫されている点や、探偵と助手、人ととあるものとの対比、投影の描写など繊細に背景を彩る要素もバランスよく書いている。「新たなる」王道の推理小説だった。
生ける屍の死 (創元推理文庫)
山口雅也 本 1996年2月25日
読了日: 2017-12-23
相対的には語れない絶対性の強い傑作。死体が蘇る現象が起き始めている世界における殺人と探偵行為の意義とは何か。死者と生者の思惑が複雑に交差し、導かれる真相には唯一無二の衝撃と美しい本格ミステリの構成美が備わっている。全編に渡る「死」の講義、「死」についての物語、そして死者が考え動くことによるユーモア、それらが無駄なく精緻に紡がれ至る謎解きは見事、エピローグは秀麗である。グリンやチェシャ、トレイシー警部などキャラクターの魅力も読ませる。異常な世界の中の独自のルールとリアルを描き切った技量に感嘆する。
2018年読了
バビロン 1 ―女― (講談社タイガ)
野崎まど 本 2015年10月20日
読了日: 2018-01-05
ただただ面白い。最後の最後まで先が気になってしょうがなかった。非常に高いリーダビリティと、一見その可読性に反するような重厚感のある捜査パート。巨悪に食いつく特捜部検事正崎善と文緒の軽妙なやりとりと、次第に見えてくる「女」の存在。謎と謎とがなかなか繋がらず、全てが繋がるときには既に・・・・・・。中盤以降の衝撃の連発と、後半の迫り上がる感情の揺さぶりは他の作品でなかなか味わえるものではない。現代のバビロンたる新域が象徴するものがなんなのか、正義がわからなくなる物語の序章。続きを読まずにはいられない。
バビロン 2 ―死― (講談社タイガ)
野崎まど 本 2016年7月20日
読了日: 2018-01-28
読み手を圧倒的に絶望させる作品。あらゆる手で希望を摘み取る手法は感情移入することを躊躇わせるほど。自殺法をめぐる世論を動かす大勝負は、善と悪をの定義を考えさせるが、その裏ではまたしても「女」が悪意を振りまいている。前作よりもスピーディかつ抑揚のあるストーリーは相変わらず面白い。しかし今回はなかなか・・・・・・これ、もう勝てないのでは・・・・・・
バビロン 3 ―終― (講談社タイガ)
野崎まど 本 2017年11月22日
読了日: 2018-01-31
本作はⅡまでと比べ形而上学的な思考を要求される。正義とは何か、自殺は悪か、を問い続けてきたシリーズは遂に「善」そのものの定義に向けて動き出す。癖のある各国の首脳達は誇りと主義の下、サミットの場で意見を戦わせる。読んでいく内に彼らが好きになってくる。先導する今回の主役アレックスは感情移入しやすく馴染み深いキャラクターであり、同時に善性を象徴するかのような鍵となる存在。アレックスやシリーズ主人公の正崎が「善」の答に辿り着こうとする時、今回もまた絶望が待ち受けている。気付くと「最悪」を待っている自分がいる。
赤い糸の呻き (創元推理文庫)
西澤保彦 本 2014年6月21日
読了日: 2018-02-07
初の西澤短編でしたが相変わらず切れ味抜群。前半三編は大したことないが、ラスト二編は最高。『対の住処』は五編中最も綺麗に収束する。「納得」の面白さで「共感」の無さを凌駕する作者にしては両者の均衡を上手く保った傑作。表題作『赤い糸の呻き』はもう終始にやけてしまった。ある意味予想通りのお家芸で満足。こちらはまさに共感性より衝撃と「無理やり納得させる」手法が素晴らしい。全編通して仮説により良い仮説を上書きする気持ちの良さと、幕が降りる際のモヤモヤ感が堪らない。狂人たちの世界では狂うことが正常と思わされる五編。
地獄の奇術師 (講談社文庫)
二階堂黎人 本 1995年7月6日
読了日: 2018-02-25
シリーズ1作目。序盤から漂う乱歩を想起させる奇怪さは心躍る。蘭子や黎人のキャラも展開も飽きさせず読みやすい。謎解き面は、犯人とトリックの一部は判った。しかしトリック自体はあまり出来が良くない。犯人が判るとトリックの一部は予見できるが、古典的過ぎてやや拍子抜け。但し本格の気風を受継いでいて物語としては面白い。動機は大好き。謎解きとしての動機よりも物語としての動機として秀逸。蘭子の探偵の資質は未熟だが、これを蘭子の名探偵としての事件の最初の1ページとして読むと話は別。蘭子の成長を見たいと思わせる1作目だった。
Xの悲劇 (角川文庫)
エラリー・クイーン 本 2009年1月24日
読了日: 2018-03-18
名作を今更ながら読了。傑作だった。当時の文化や技術の水準への不案内さに苦戦し、推理はうまくいかなかったが、ダイイングメッセージのおかげで犯人だけは判った。極めてシンプルな論理で事件のあらましが見えてくる様は唖然。レーンの自由さと秘密主義(理由はあるのだが警察には言ってもよかったのでは笑)にはやれやれという思いはあったが、難解に見える謎をシンプルかつロジカルな手法で隙なく落とす展開は名作たるものだった。
修羅の終わり (講談社文庫)
貫井徳郎 本 2000年1月14日
読了日: 2018-03-22
素晴らしい問題作。『夏と冬の奏鳴曲』『匣の中』のように考察を幾重にも重ねることで読了直後よりも深みが出て、遅効性の快感が襲う作品。三人の人物の一見関連のない修羅の道が最後の一行を読み解くことで繋がる。ミッシングリンクを埋めるようにして辿る緻密な仕掛けと、適度な歪み、辿り着けない謎の配置がより思考を加速させる。ストーリーはノワール小説が好きな人にはページを捲る手が止まらないだろう。逆に暴力や裏切りの描写が苦手な人には全くお勧めできない。公安、悪徳刑事、記憶喪失者、生まれ変わり、地獄絵図の先にある結末は・・・
魔術師を探せ! 〔新訳版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
ランドル・ギャレット 本 2015年9月8日
読了日: 2018-04-09
想像よりかなり楽しめた。ある時点のある出来事から分岐した史実とは異なる歴史を辿ったif世界という舞台も良く、魔術が実在するという世界観も良し。それでいて事件の捜査は実践的な推理によってフェアに行われるのが面白い。魔術が関わる事件に魔術師ショーンが魔術により情報を探り、捜査官ダーシー卿が推理によって事実をあぶり出す、この一風変わったミステリの在り方が心地いい。解決の鮮やかさは見事で、それでいて意外性もあり、ひねりの効いたオチも秀逸。収録されている三作とも、解決とオチには感嘆した。
美濃牛 (講談社ノベルス)
殊能将之 本 2000年4月
読了日: 2018-04-27
石動戯作シリーズ一作目。殊能作品はやはり非常に読みやすい。文庫換算750ページほどの大作でも1日で読めるほど。内容は横溝オマージュであるが未読でも問題ない。小さな驚きを小出しにしていきながら最後には全てが逆説的に繋がっていくストーリーの綿密さは壮観。牛に関する引用や石動の蘊蓄は面白く、時に深い考察の余地を残す。冒頭で早々に明かされる犯人と結末は、長い物語の中でどうそこに繋がるかを推理させ、同時に強力なミスリードに誘い込む。古典をアップデートする逆説の村の殺人事件。作者特有のユーモアも安定して面白い。
窓音ちゃんかわいい。
あなたのための物語
読了日: 2018-05-06
時代が進んでも理不尽に人は死ぬ。その理不尽という感覚すら人が人生を意味ある「物語」として捉えたいという想いの産物に過ぎず、ヒトは動物のようにただ死という終わりを迎える。余命半年を宣告された、脳の動きをマッピングし個々あるいは時々によって異なる感情をテキストとして記述する人口神経制御言語ITPを開発したサマンサと、それにより記述された仮想人格〈wanna be〉による等身大の「生と死」に向き合う物語。人の死に対してここまで真摯に現実を突きつけた小説を僕は知らない。救いも悲劇もない物語は痛みを伴い心を打つ。
友達以上探偵未満
麻耶雄嵩 本 2018年3月30日
読了日: 2018-05-18
麻耶入門としては良く出来た作品。ただ麻耶作品にしてはあまりに弱い。一、二編目はロジカルなミステリで、ある意味作者の特有のやや細か過ぎるほどの論理が楽しめる。犯人当てとして水準は高い。三編目はこの作者の本領発揮とも言える展開で、探偵と助手の関係や探偵の存在への観念的な問いかけが浮かび上がる。ただ麻耶ファンとしては今作もそれなりに楽しいが、「今更このネタをやられても」というのが本音かもしれない。一貫してやや真面目なミステリだった。ちなみにあお派です。でもももを手元に置いておきたいというのはちょっと分かる(笑)
黒い仏 (講談社ノベルス)
殊能将之 本 2001年1月
読了日: 2018-05-22
探偵 石動戯作と助手アントニオが依頼された宝探しと、殺人事件の二軸で展開する物語。しかし、そこに顔のない本尊や怪しげな僧侶が関わり・・・・・・。新本格史上最大級の問題作。完全に読み手の好みによって評価が左右される作品だが、「ある根幹的な要素」と後期クイーン問題を少しでも解っていると非常に面白い。「二章 8」の唐突なる幕間を境に読者と探偵の視点は乖離し、その差分は怒涛のミステリ的技巧とユーモアで埋められていく。大胆な因果の転倒や循環は読者を唖然とさせる。終盤の石動のある台詞や最後の一文は思わず笑った(笑)
金雀枝荘の殺人 (中公文庫)
今邑彩 本 2013年10月23日
読了日: 2018-06-19
館ものミステリ。ドイツ風の洋館で大昔に起きた事件と、一年前に起きた一族六人殺し、その真相を探るべく集まった一族の兄妹たち。謎めいた序章が読了後は終章に昇華する構成美が美しい。複雑な状況と登場人物の多さで情報過多なところがあるが、かなり読みやすい。推理の過程は鮮やかで、印象的。豊富に登場させた本格のガジェットの使い方がやや甘いのと、意味ありそうでいて放置したままの伏線や違和感が多いのが玉に瑕ではある。ロジカルな本格ものではないが、ストーリーの組み立て方や描写が非常にうまく飽きさせない面白さがある。
探偵AIのリアル・ディープラーニング (新潮文庫nex)
早坂吝 本 2018年5月29日
読了日: 2018-07-22
AIモノの作品の入門として良いかもしれない。これで作中紹介されている瀬名秀明の『デカルトの密室』に興味を持ってバトンが回ると良いなと個人的には思う。内容としては人工知能が探偵であり犯人であるからこその展開は面白い設定だった。フレーム問題や中国語の部屋、チューリングテストなどの取り入れ方がうまく、わくわくさせる。事件の緩さや敵の小物感などイマイチな部分も多いが続編を意識したゾッとするような伏線もちらほらあり、今後に一応期待はしたい。何より読みやすく、興味本位で軽く読めるのが嬉しい。旬な内に読みたい作品。
シンフォニック・ロスト (講談社ノベルス)
千澤のり子 本 2011年2月8日
読了日: 2018-09-03
青春ミステリの傑作。中学吹奏楽部という舞台設定の中で追体験させられるノスタルジーと切なさはどうにも心をざわめかせる。ミステリの読み手としてある程度のトリックは看破できるものの、それを遥かに超える技術力で最終的には綺麗に騙されてしまった。あまりの趣向にある種の敗北感すら覚えるほどに。本作以上に「再読」で爆発的に輝く作品もそうないのではないだろうか。本来強引に映りがちな構造は、本作の場合ストーリーの絶妙な説得力によりむしろ相乗的に心を抉る。辛かった・・・・・・こういうのほんと大好き。
妖異金瓶梅 山田風太郎ベストコレクション (角川文庫)
山田風太郎 本 2012年6月22日
読了日: 2018-09-17
中国四大奇書『金瓶梅』を基に、キャラクターと舞台をそのままに連作ミステリとして再構築したのが本作。金瓶梅といえば水滸伝のスピンオフだが、厳密には水滸伝から分岐した違うルートである。本作はその金瓶梅のシナリオを抑えつつ実は水滸伝のシナリオも重要な要素として機能している。とはいえ、元ネタの知識は不要。ミステリとしては本来は連作では用いないある縛りをあえて使い、その上で成功させている。ハウ・ホワイダニットものの連作短編としても面白いが、連作が「長編化」していく終盤も見事。あまりに壮大で美しく哀しい。
合邦の密室
稲羽白菟 本 2018年6月21日
読了日: 2018-09-19
綺麗な物語で、さっぱりとした読後感。終始穏やかに展開する静のミステリ。探偵役は物静かで知的なイメージ、しかしその内部に情熱的な部分も持っていることが伺えるのが好印象。他の多くの主要キャラクターたちも人情味があり、記号化されていない暖かな言動をするのが良い。文楽の世界を舞台にしたミステリだが文楽をあまり知らずとも自然に理解しながら読める。読み終える頃には舞台が立体的に脳裏に浮かぶだろう。冒頭から投げかけられた謎が一つの章をまるまる使って一気に明かされる様子が気持ちいい。
夕暮れ密室 (角川文庫)
村崎友 本 2018年9月22日
読了日: 2018-09-25
青春ミステリ。田舎の高校のバレー部マネージャーで、男子の憧れの存在である森下栞の死は不自然な点を残しつつも密室と遺書により自殺の線で捜査される。バレー部の仲間やクラスメイト達は疑念を抱き、独自に推理を始める。終始痛みを伴う悲壮の物語だが、どこか青春の爽やかさやもどかしさ、淡さや熱さを感じる。各章ごとに語り手が変わり、各々の想いが徐々に真相に迫る。終章にかけて全てのピースが揃い、導かれる唯一のロジックは本格のそれで、全編が無駄なく計算され尽くしていることに気づく。途中の「奇蹟」の推理とラストシーンが大好き。
奇想、天を動かす (光文社文庫)
島田荘司 本 1993年3月1日
読了日: 2018-10-07
本格と社会派の融合、まさに奇想が天を動かす名作。およそ不可能に思える死体消失や白い巨人の謎。そして消費税導入に際した衝動的殺人と思われた事件の背後にある深く長い苦痛と執念の物語。あまりに奇怪な謎が、社会的テーマを取り込みながら一挙に解かれていく様が見事な作品だった。「本格」部分にあたる謎解きはそう難しいパズルではないが、そこに社会的テーマや時代、風土の「ドラマ」が織り込まれることで非常に重厚感のある物語になっている。作者の個人的想いが投影され過ぎたきらいがあるが、それが登場人物を立体的にしている。
すべてがFになる (講談社文庫)
森博嗣 本 1998年12月11日
読了日: 2018-11-11
シャカミス課題本として四年ぶりに再読。初読時よりも評価は高い。再読で気付く伏線の多さや絶妙な難易度設定、大胆なストーリー構成、先取りされたギミックと世界観。落ち度を探すのが困難な程に完成されている。天才を超える天才とそれをも凌ぐ天才の物語は、読者の予想を超えて錯綜し、あるべきところに収斂する。タイトルやトリック、伏線回収、なぞかけ、あらゆる側面から見ても調和が取れている美しい構造は記憶に残る。またいつか、再読するだろう。
グランド・ミステリー (角川文庫)
奥泉光 本 2013年9月25日
読了日: 2018-11-19
初めてレビューを残さないという選択肢が過った。内容が余りにも語り切れないからだ。この940頁の怪作はとにかく眩暈のするような構造で、酩酊と混沌の世界だったのだが、それでも僕はこれを望んでいた。こういう小説を読みたかった。人物描写が巧みで、会話も面白い、主題も考えさせられる。だがそんな凡庸な魅力も構造の歪みに呑み込まれていく。凡ゆる謎は解決を唯一の帰結とせずに歪んだ時空と構造に呑まれ、世界が徐々に捻れ、大きな畝りとなって最後には凪が訪れる。この神秘的とも言える読後感に未だ囚われている。
神戯-DEBUG PROGRAM-Operation Phantom Proof (講談社BOX)
神世希 本 2010年12月2日
読了日: 2018-12-21
奇書と聞き読了。所謂「黒い水脈」の奇書とは趣は違うものの、衒学趣味と酩酊感など奇書の要素は含んでいる。そしてそれを打ち消す寒いギャグとフォント芸(笑) 長所短所は混在してある意味強烈な個性になっている。 ミステリ好きは思いの外楽しめるだろう。ガジェット、論理展開、そして何よりあの大仕掛けは秀逸。伏線は気づいて当然なレベルのものだが、その予想は大胆かつ飛躍した接続を以って裏切られる。 この物語が「神戯」であり「DEBUG PROGRAM」であることは読了後に本当に理解することになる。しかし疲れた・・・・・・
赤い部屋
読了日: 2018-12-22
喫茶店で急遽読書会。 オチのキレの良さ、物語の求心力は非常に強い。部屋の描写が読者を幻想の中に惹き留め、それが重要なギミックになっている。視点が聞き手から始まるので、読者もまた赤い部屋にいる客人であるかのように感じることができる。そしてそれが読後感に大きく影響してくると思う。内容も誰もが一瞬頭をよぎったことのあることというか、そういう感覚をうまく表していて面白い。再読してもやはり傑作。
堕天使拷問刑 (ハヤカワ・ミステリワールド)
飛鳥部勝則 本 2008年1月25日
読了日: 2018-12-31
奇書並みに衒学的な悪魔論やモダンホラー紹介は実に作者らしい。バカミスとしても度肝を抜かれる奇想に脱帽。とりわけ犯人の行動や、とある人物の行為は衝撃的だ。 冒頭から提示される謎は魅力的で、最終的に超自然的な展開になるのか現実的な落としどころがあるのか判然とせず息を呑む。 創世記戦争が俄かに現実に溢れ出す第三部はこれだけでも一読の価値がある。 荒唐無稽な展開と叙情的な幕引きは、怪奇ミステリの後味から青春の切なさへ導き、不思議と美しく物語は着地する。最後の「ひと押し」には崩れ落ちる想いがした。忘れ得ぬ傑作。
2019年読了
少女を殺す100の方法
読了日: 2019-01-04
ミステリでありながら同時に様々な特殊設定を試みている作品。この作者は異常な状況下での「謎解き」を書かせたら抜群に上手い。 最もロジカルでミステリ的なのは『少女教室』だろう。『少女ミキサー』はCUBEやSAWのような不条理な状況が面白い。『「少女」殺人事件』はメタミステリ。ノックスの十戒の扱い方に注目。『少女ビデオ公開版』は平山夢明のような作品、新境地かもしれない。『少女が町に降ってくる』タイトル通りの怪異に対して行われるロジカルなミステリ。 どれも新たなミステリへの挑戦心を感じ、率直に面白い。
1/2の騎士 (講談社文庫)
初野晴 本 2010年1月15日
読了日: 2019-01-08
可読性、構成美、テーマ、どれも素晴らしい。女子高生マドカと相棒サファイヤは、街を守るため四人の異常犯罪者に立ち向かっていく。「序盤戦」から「終盤戦」に至るまでの異常犯罪者との対決はそれぞれ仕込まれた謎が魅力的。盲導犬殺しのドッグキラー戦での意外な真相、部屋に気配だけを残す侵入者インベイジョン戦での動機の悍ましさや解決の論理、毒を散布する姿なきラフレシアとの戦いでの狂気は印象的。徐々に危険な強敵と出会うのは、段々と誤魔化しの効かない絶望や葛藤に向き合うことでもある。灰男との対決は物語が終わる切なさを感じた。
十角館の殺人 限定愛蔵版
綾辻行人 本 2017年9月6日
読了日: 2019-01-13
『十角館の殺人 限定愛蔵版』読了。約6年ぶりの再読。改訂版は初めて読んだが、細かな配慮がされていて好印象。今や名作古典のような扱いになっている新本格の原点となる本作、やはりよくできている。読んでいてワクワクさせる上に再読だと伏線が思いのほかしっかりと残されていることが判る。なによりも一行で全てを明らかにする構成が素晴らしい。論理的に真相に至れない点は欠点だが、ある意味でそれ故とも言えるあのラストは美しい。豪華作家陣のエッセイが読めるのも嬉しい。
お前の彼女は二階で茹で死に
白井智之 本 2018年12月14日
読了日: 2019-01-15
これはすごい。倫理観の欠片もないエログロ描写はいつものことだが、それが多重解決の重要な要素になっているのが見事。今までは背徳的な内容とミステリとしての内容は幾らか分離されてきた印象があるが今回はかなり密接に結びついていて斬新。内容は最低最悪なのにここまでロジカルにミステリと混ざり合っているのは余りに異様。ミミズ人間なんてものが存在する悪趣味で悪意に満ちた狂った世界で、どこか整然と歯車が噛み合っていく。全てを虚無へと還すエピローグが衝撃的だった。
〔少女庭国〕
読了日: 2019-02-09
卒業式会場へ向かう少女は、ふと暗い石造りの部屋で目覚める。この部屋には二つの扉と貼り紙があり、貼り紙には「ドアの開けられた部屋の数をnとし死んだ卒業生の人数をmとする時、n‐m=1とせよ」とある。 この状況から、どんな物語を想像するだろう。本作は読者の想定を簡単に飛び越える。 羅列された「生命行動」はデスゲーム系への否定的命題を投げかけるし、それは「物語」というもの自体に対してまで波及する。この理不尽で広大な密室は、我々が住む世界と本質的にどれほど違うのだろうか。そんなことを想う。
天帝のはしたなき果実 (幻冬舎文庫)
古野まほろ 本 2011年10月12日
読了日: 2019-02-13
第五の奇書を求めて。序盤は世界観が嫌でも解る吹奏楽部の青春劇。強烈な「まほろ語」の連発、外国語ルビの多用という読み難さから始まり、急激に物語は本格ミステリの空気を帯びる。黒死館や虚無への供物を踏襲した衒学的な会話、推理合戦が圧巻。推理パートの論理は作者が師と仰ぐ有栖川流で、精緻そのもの。但しそれだけで終わらないのが「奇書」たる所以。個人的には終盤の展開そのものよりも「古野まほろ」の行為の方が衝撃的だった。正直なところ「こいつ」は好きになれない(笑) しかし、それでもやはりどうしようもなく楽しかった。
水車館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)
綾辻行人 本 2008年4月15日
読了日: 2019-02-28
館シリーズ二作目。前作よりもミステリとしての純度は高い。水車館という舞台と、クローズドサークル、そして特徴的な登場人物たちも含め、お約束の本格ミステリ世界はやはりワクワクさせられる。難易度は低めで、違和感のある表現や描写を用意されたミステリギミックと組み合わせるだけで真相が判る。しかしこの作品の良いところはサプライズよりも雰囲気の良さと構成の美しさだ。丁寧に配置された伏線を回収していった先の、ラストシーンの恐ろしさにはゾクリとする。長い長いシリーズの幕開けを感じさせる「新本格」のお手本的作品。
魔眼の匣の殺人
今村昌弘 本 2019年2月20日
読了日: 2019-03-07
前作が大ヒットする中、今回は「あと二日で四人死ぬ」という予言が場を支配するクローズドサークル。質では間違いなく今作の方が上。前作でやや甘かった論理は、今作では単純な構図にした上で真相が判りにくい、いわば無駄ないスマートな論理になっている。サプライズも表面的過ぎた前作と比べ、本筋と絡んだ大事な楔になっている。世界観の背景も垣間見れ、やはり全体的により読者に配慮したものになっている。ミステリ的な部分とストーリー的な特殊状況がうまく融合している点は前作と同様素晴らしい。純粋に面白く、納得のいく内容だった。
迷路館の殺人<新装改訂版> (講談社文庫)
綾辻行人 本 2009年11月13日
読了日: 2019-03-19
今作の特徴は「作中作」しかも部分的に作中作中作も生じているところが非常にユニーク。どこか奇書的な部分も感じさせつつ、正統なミステリとしてのガジェットと流儀を継承している。迷路館という館自体も前作までとは一線を画した壮大で推理小説的なものとなっている。登場人物もミステリ作家やマニア達で、ある程度読者と近い感覚で推理を進めていく様子が良い。解答への難易度は部分的にはそこまで高くないが、全てを解くのは苦戦するだろう。前作までは正答していた私も初黒星となった。
エッシャー宇宙の殺人 (中公文庫)
荒巻義雄 本 1986年10月
読了日: 2019-03-25
様々な人の見る夢から成立する街カストロバルバ。この街ではエッシャーの騙し絵のような建造物が実在する。誰もが一度は見たことがあるエッシャーの絵の中で起きる殺人を夢探偵の主人公が解決する連作短編。夢と幻想の世界だけあってやや本格度は薄い。しかしエッシャーの絵だからこそ起きる奇怪な事件は面白い。特に2話の無窮の滝の殺人はミステリファンも十分楽しめる。何より好きなのはこの小説の舞台。夢の街の中での日常があまりに魅力的で、この世界で暮らしたいと本気で思った。幻想ミステリの傑作と言っていいだろう。
そして二人だけになった―Until Death Do Us Part (新潮文庫)
森博嗣 本 2002年11月28日
読了日: 2019-03-31
海峡大橋を支える巨大なコンクリート塊内部に造られた「バルブ」と呼ばれる閉鎖空間に6名の男女が閉じ込められる。密室と化した「バルブ」内で次々と起こる殺人の結末は・・・・・・。という王道の本格ミステリの体で物語は進行していくが、段々と状況は奇妙に歪んでいく。読ませる展開とミステリとしての完成度は見事、しかし魅力的なのはこの物語の真相についてだろう。客観的な事実とはなんなのか、相対性理論が引用されるこの物語はそれ自体がそういった見方を試されている。
スノウブラインド
倉野憲比古 本 2008年6月27日
読了日: 2019-04-04
不気味な伝承の残る土地に血塗られた歴史のある館。ドイツ現代史の権威ホーエンハイム教授の邸宅、蝙蝠館に招待されたゼミ生達は、吹雪で外に出られない状況で、殺人事件に巻き込まれる。三大奇書に通じる衒学趣味と酩酊感は、その筋の愛好家には大好物だろう。心理学や悪魔学、魔女やホラー映画の知識を披露する登場人物達は魅力的だ。物語の前半はオーソドックスな古典ミステリの体裁を取り、次第に歪み始める世界観は読者を「浮遊」させる。地味ではあるものの施された技巧と構成美は、切り捨て難い引っかかりとなって読後も心を騒つかせる。
人形館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)
綾辻行人 本 2010年8月12日
読了日: 2019-04-14
これは噂通りの異色作。前作迷路館もどこか奇書のような要素があったのだけれど、今回もまた前回とは違ったベクトルで奇書のような要素を含んでいる。本格の色濃さを度外視した物語としての一貫性、突出した「異界」の演出という点では、今までで一番好みかもしれない。一種の先の読めなさも評価できる。主人公の心理や何気ない描写が、しっかりと伏線として回収されるのはこれまで通り安定している。訪れるカタストロフの予感は読み手を終始不安にさせ、それがたまらなく魅力的な作品。
衣裳戸棚の女 (創元推理文庫)
ピーター・アントニイ 本 1996年12月21日
読了日: 2019-05-11
密室の傑作だが、その本質はプロットに無駄がないことに依る。物語に「密室」が不可欠であり、それが密室モノである所以ともいえる。同様に「ユーモア」のミステリであり、これもまた不可欠。邪悪さが払拭された世界のためには、なくてはならない。この「密室」と「ユーモア」がプロットを支える二本柱であり、そこに不可能状況や幾つもの仮説のスクラップアンドビルドが加わることで、魅力的な謎とその解明の物語が成立している。最高のオチに導くプロットのための作家視点での必然性と、作中の因果がメタ的に転倒するところがすごく楽しい。
終末少女 AXIA girls
古野まほろ 本 2019年1月22日
読了日: 2019-05-26
僕の所属する社会人サークル「シャカミス」の推理会課題本。一週間程丁寧に読み込み、仲間とともに読者への挑戦状に挑んだ。結果は神がかった多重推理による快勝!
モチーフや終末世界という設定自体が好み。人狼を思わせる犯人捜しのロジックや、犯行のタイミング・経路の特定には膨大な伏線を拾い上げる必要があり、単なるフーダニットとはまた異なる特殊なロジックを組むことになる。作中に張り巡らせられた数多な仕掛けが解決編で一挙に明かされるのがあまりに爽快だ。大胆なトリックもあれば、本当に些細な気付きでほどけていく謎もあり、すっきりした短いプロットの中に多彩な技巧が見て取れる。物語の結末も美しい。読み込んだだけ特別な一冊になった。
メンバーのサラさんが動画にまとめてくれました。
霧越邸殺人事件<完全改訂版>(上) (角川文庫)
綾辻行人 本 2014年3月25日
読了日: 2019-06-19
霧越邸殺人事件<完全改訂版>(下) (角川文庫)
綾辻行人 本 2014年3月25日
読了日: 2019-06-19
館シリーズのように霧越邸という建築物そのものが異常な存在感を放ち、そしてそこで起こる怪奇幻想色の強いある種の暗合はこの場でしか成立し得ない奇妙なロジックを展開していく。だがその一方で吹雪の山荘で起こる連続殺人においてはこの超常のロジックなしでしっかりと成立する。極めて精緻で段階的な検証の積み重ねで犯人やトリックを看破することができる。本格そのものと言っても過言ではない状況、見立て、設定、論理は初期の館シリーズを経てここに大成したと言えるのかもしれない。
スノーホワイト (講談社文庫)
森川智喜 本 2014年11月14日
読了日: 2019-06-23
関東シャカミス課題本。 第一部では「日常の謎」を「真相を映し出す鏡」を用いて解く様が本格への反転として描かれ、第二部では探偵三途川理がその鏡を用いて主人公たちを追い詰めていく。第一部は非常によくできた変則ミステリ、アンチミステリと言える。第二部はやや弱い。必然性のない行動や対処の甘さ、偶然に頼った不自然さなど、やや詰めが甘い。コンゲームとしては登場人物は総じてあまり頭は良くない。あまりに現実的だと興醒めする内容だったかもしれずその点ではメルヘンとして良い塩梅なのかもしれない。やろうとしていることは面白い。
時計館の殺人<新装改訂版>(上) (講談社文庫)
綾辻行人 本 2012年6月15日
読了日: 2019-06-30
時計館の殺人<新装改訂版>(下) (講談社文庫)
綾辻行人 本 2012年6月15日
読了日: 2019-06-30
館シリーズ5作目にして王道回帰の傑作。時計館の内部と外部の二視点で進む物語。内部では違和感を感じつつも、連続殺人の緊迫感と、奇妙で特異な雰囲気に呑まれてしまう。外部では時計館を取り巻く数奇でどこか不気味な過去の物語が掘り下げられ、謎は謎をより濃厚にする。今回は作者の大きな武器である幻想怪奇よりも、ロジックと伏線、構成の美しさに最大の注力をしている。もちろんそれらを取り囲む装飾には幻想怪奇の影もしっかりと見え隠れするのであるが。何よりも、各所に散りばめられた描写の妙が素晴らしい。そして終幕が美しい。
虚構推理短編集 岩永琴子の出現 (講談社タイガ)
読了日: 2019-07-15
城平京ファンには久しぶりのロジック攻めで満足な作品。『名探偵に薔薇を』『スパイラル』時代から変わらない偽りの推理が真実を超えるために紡がれる論理は美しい。歪で捻じれた違和感の集合体を美しく捉え直すこのシリーズはこの作者の作風と絶妙にマッチしている。犯人の一言が気になって悶々とする妖怪の柔らかで「人間らしい」行動や、普通の人なのに推理を始めてしまううなぎ屋の客など、キャラクターも妙に立っていて面白い。綺麗に全てがあるべきところに収まるラストもあり、一方でゾッとするようなラストもある。全編しっかり楽しめる。
虚構推理 スリーピング・マーダー (講談社タイガ)
城平京 本 2019年6月21日
読了日: 2019-07-27
論理の綻びを綻ぶ前に論理で丸め込む作風は、虚構で「真実」を作るこの物語に相応しい。 本作品は事実上の中短編集に近い構造で、正直前後日譚は回想で十分な内容なので短編の文量があると少々間延びしている感があるが、表題の『スリーピング・マーダー』を中心とした物語群としてはうまくできている。 鋼人七瀬よりも怪異は抑え気味だが虚構のロジックと多重解決の巧さは相変わらずで、論理の隙は必ず回収され正されるという確証が持てる程にこの作者は信頼できる。退屈させない展開と落とすべきところにしっかり落とす物語の綺麗さが良い。
黒猫館の殺人〈新装改訂版〉 (講談社文庫)
綾辻行人 本 2014年1月15日
読了日: 2019-08-06
館シリーズ六作目、再始動の印象深い作品。本作 は、ミステリの王道たる「殺人の謎」からやや外れた風変わりな謎解きがメインとなる。額縁小説の体裁は迷路館以来で、即ちそれは正当なるフェアな謎解きの成立を意味している。シリーズ屈指の大量の伏線は、謎解きの主体が何であるかが明かされないことで読者を惑わすが、違和感を拾い集めた先には納得の世界が待っている。ある意味で初歩的な謎解きを徹底して作り込んだ感があり、ややヒントが過多であるとも思える。しかしその分納得感は強く、描写の説得力と必然性についても申し分ないだろう。
余談だが、この作品は「物語が始まる前に当てる」という僕の趣味において唯一の触れもせず見もせずトリックを当てた作品。まあまぐれなんだけど、時計館読みながら推理していた内容がドンピシャで黒猫館でやっていたトリックだった(笑) こういう奇跡もあるんだなぁ。
嫉妬事件 (文春文庫)
読了日: 2019-08-17
本編のバカバカしさと、それに反したロジックの厳密さが面白い。可読性があり、情報が小出しにされていくことで、事件としては地味ながら飽きることがない。「死体」の代わりとなる〇〇〇があまりに異質すぎて、それが故に特殊な論理が展開していく。〇〇〇がミステリ読みにとっては「死体」以上の存在感と特異性を持っているという屈折した状況が最早面白すぎる。登場人物の行動にいかなる思考と理由が隠されていたか段々と判っていく様はいかにもミステリ研の面々らしい推理合戦に依るところがあり、これはミス研に所属する者として愉快だった。
綺想宮殺人事件
芦辺拓 本 2010年4月28日
読了日: 2019-08-31
第五の奇書と称される作品群の中では『神戯』を除けば現在のところ最新の作品。琵琶湖畔に聳える奇怪な建築群「綺想宮」を訪れた探偵森江春策が連続殺人に挑む。本格ミステリのコードを踏襲しながらも膨大な薀蓄で溢れかえり、主体が転倒してしまう様はまさに『黒死館殺人事件』のオマージュとして正統であるといえる。しかし黒死館に込められたアンチミステリの要素は更に深化し、本作ではその先の結論へと読者を引きずり込む。「最後の探偵小説、探偵小説の最期」と銘打たれたこの作品最大の特徴は綺想宮を彩るペダントリーの先にこそある。
失われた過去と未来の犯罪 (角川文庫)
小林泰三 本 2019年8月23日
読了日: 2019-10-26
「ある日、全人類の記憶が10分しか保たなくなる」というシンプルながら強烈な設定一本で、人類がそれをどう乗り越えるのかを描き、乗り越えた先にある混乱、人情、罪も描いているのが凄い。そして記録が「記憶」となった時、人間の「こころ」や「たましい」は記憶と同値なのか、人の意思や意志は肉体と記憶どちらに宿っているのか、という「心の哲学」に踏み込んでいく。一つの思考実験としても興味深く、考えさせられる。小林泰三はこの題材を他でも使っているが、人類の行き先にまで解釈を広げたのは一つの到達点なのかもしれない。
光と影の誘惑 (創元推理文庫)
貫井徳郎 本 2010年11月12日
読了日: 2019-10-26
『長く孤独な誘拐』誘拐もののスリルがありながらも、本作は冒頭から投げかけられる「なぜ誘拐されたか」というホワイが結末までよく効いている。結末は好き。タイトルが秀逸である。
『二十四羽の目撃者』やや技工は弱いもののストーリーとしてはなかなか良い。作者はこういうのも書けるのか。
『光と影の誘惑』おそらく最も評価が高い中編。二つの視点から描く緊迫感と、鮮やかな技巧が素晴らしい。
『我が母の教えたまいし歌』主人公が過去を探っていく過程が面白い。謎が明らかになると次の謎が顔を出す。伏線が綺麗に回収されて至る結末が見事。
玩具修理者 (角川ホラー文庫)
小林泰三 本 1999年4月8日
読了日: 2019-10-27
小林泰三の作風を凝縮した2編。『玩具修理者』は壊れたおもちゃをなんでも直してしまう存在の話。それはたとえば死んでしまった猫や子供でも……。40頁程の掌編だが切れ味は抜群、実はクトゥルフ好きにもおすすめ。『酔歩する男』は馴染みの店に行こうとしたら店がなかったり、不意にたどり着いたり、そんなことがある男が自分を大学時代の親友と名乗る「見知らぬ男」と出会うところから始まる話。タイムトラベルという王道のテーマで、「時間」への固定観念を破壊する衝撃的な物語を展開している。眩暈を禁じえない、恐ろしい狂気の短編だろう。
忌憶 (角川ホラー文庫)
読了日: 2019-10-30
記憶にまつわる三つの短編。
『奇憶』は主人公の堕落していく様が印象的。クトゥルフや量子力学が絡んでくる作品だが、むしろ人が駄目になっていく過程のリアルさが凄く刺さる。
『器憶』はふとしたきっかけで腹話術を習得する羽目になった主人公がある人形と出会い怖ろしい目に遭う話。
『垝憶』は前向性健忘症の主人公を描く短編。記憶が数十分しか保たないことで起きるトラブルや、思いも寄らない恐怖が面白い。『記憶破断者』の前日譚でもある。三編を通して語られる「記憶」の本質はいまや作者の十八番。記憶とは「自己」の本質なのかもしれない。
殺人鬼にまつわる備忘録 (幻冬舎文庫)
小林泰三 本 2018年10月10日
読了日: 2019-11-09
『記憶破断者』の改題。「自分の記憶は数十分しかもたない」衝撃の警告文から始まる本作は、新しい記憶を長期記憶に移行できない前向性健忘症の主人公の物語だ。そして彼は今、記憶を改竄する超能力を持つ殺人鬼と戦っている。 ……とこの時点で抜群に面白い設定だが、最強の殺人鬼とその能力に最も相性が悪い健忘症の主人公という組み合わせが複雑でスリリングな展開を創り出していく。目の前の男が殺人鬼かどうかも忘れてしまうのだから。 そしてこの物語にも「記憶」と「意識」というテーマがある。記憶の代わりに記録を残すなら、記録こそが意志なのかもしれない。
奇書の世界史 歴史を動かす“ヤバい書物”の物語
三崎律日 本 2019年8月23日
読了日: 2019-11-24
奇書を単なる奇妙な書物として捉えるのではなく、その裏にある歴史と常識の成立過程の歪みを捉えているのが好印象。当時受け入れられたものが、現代になって振り返ればあまりに奇妙な価値観となり得る。そして受け入れられた背景には未発達な学問や文化だけではなく当時の人々の願望や情熱が関係している。それは現代の常識がやはり願望や情熱で彩られた歴史や知識であって、後の時代に奇妙な世界観として語られる可能性を孕んでいる。それの良し悪しはわからないが、そこに嫌悪感や、ロマンが眠っているのは理解できる。
人獣細工 (角川ホラー文庫)
小林泰三 本 1999年12月
読了日: 2019-11-27
実に著者らしい凶悪とも思える三編の中編が収録されている。
『人獣細工』テセウスの船を人体で表現した作品。人が人であることの定義を問う。それが曖昧になることが恐ろしい。
『吸血狩り』吸血鬼を撃退すべく勇猛に戦う少年の物語……として読めるが、そこには悪意あるリドルが口を開けている。
『本』今回の白眉。幻惑的で酩酊感のある展開は奇書の構造だが、この作品に至っては文字通りの「奇書」と言えるだろう。伝染型のホラーやブラックユーモア的スプラッタとも取れるが、本質的には世界の揺らぎだ。ラストシーンなどは邪悪そのものである。
メインテーマは殺人 (創元推理文庫)
アンソニー・ホロヴィッツ 本 2019年9月28日
読了日: 2019-12-26
作者のアンソニーが作中に登場し、舞台やモデルは実際のイギリスそのまま。登場人物のなかには実在の人物もいたりして、非常に面白い。キャラクターが活き活きしていて、それぞれの思惑で秘密を持ち、様々な状況と理由で行動する。それをじっくりと観察して、真相を見抜いていく探偵役のホーソーンも魅力的なキャラクターだ。ヒントをヒントと思わせず配置して、思わぬ証言や証拠の組み合わせから謎を紐解いていく過程はうまい。一つの良い映画を観たかのような読後感だった。
まとめ
冒頭でこんな事を言いました。
僕は一年に30冊前後くらいしか読まないので、5年分まとめて振り返ってもさして苦ではないなと思いやってみました。
ごめんなさい、めっちゃ疲れました!!!!
しんどいです!!!!
まあでも備忘録としてはいいかなと思ってます。
振り返るとどれも楽しい読書だったなぁ。
そんなわけで2010年代も終わりですが、この調子で来年もじわじわ既読を増やしたいと思います。
普段はTwitterにいるので、来年もよろしくおねがいします!