哲学のプロムナード(ΦωΦ)黒猫堂

推理小説やSFのレビュー・書評・ネタバレ解説・考察などをやっています。時々創作小説の広報や近況報告もします。

クラーク『幼年期の終わり』レビュー

 

初版から36年後に書き直された新版、初の邦訳!SFを超えた「哲学小説」! 地球上空に、突如として現れた巨大な宇宙船。オーヴァーロード(最高君主)と呼ばれる異星人は姿を見せることなく人類を統治し、平和で理想的な社会をもたらした。彼らの真の目的とはなにか? 異星人との遭遇によって新たな道を歩み始める人類の姿を哲学的に描いた傑作SF。


・レビュー

素晴らしい小説だということはこれまでに沢山の機関が示しているこの小説であるが、その理由が少し判ったような気がする。
この小説には、現代人のSFに対するイメージを超えたメッセージがあるし、そのメッセージこそ本来のSFの姿であるように感じた。
1953年に書かれたこの小説を現代人が読んでも、決して色あせてはいない。池田 真紀子 氏の訳が素晴らしいことも、それを助けているように思う。
まさに今のこの時代を描写している場面もあるが、それは50年間に書かれたとは思えないほど「現代」だ。もちろんインターネットやパソコンはさすがに予想できない技術と機器だったのだろうが、新訳になってそれらが書き足されなかったことも非常に味わい深い。
なにより、オーヴァーロードという支配者の真の目的と人類の進む道、「幼年期」という言葉の意味は想像力豊かな現代人には堪らなく引き込まれるに違いない。
クラークの未来を描く力とその想像力、そしてそれらの産物にに心の繊細さを内包させたこの作品は、今の時代でも霞まない名作だと思う。
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