哲学のプロムナード(ΦωΦ)黒猫堂

推理小説やSFのレビュー・書評・ネタバレ解説・考察などをやっています。時々創作小説の広報や近況報告もします。

村上春樹 『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』 レビュー

良いニュースと悪いニュースがある。多崎つくるにとって駅をつくることは、心を世界につなぎとめておくための営みだった。あるポイントまでは…。

・レビュー

初めて小説を読んで「お、おう……」と口に出して体をサッと後退させてしまった。およそストーリーは普通なのに、言い回しとセリフとキャラクターとその行動と雰囲気にところどころコーヒーを吹いてしまう。これはなかなかギャグ小説。
というのが感想としては一番強いのだけれど、おそらく村上春樹本人はギャグ小説のつもりじゃないと思うのでまじめにレビュー書こうかな。
というのも私は3つ星にはほとんどレビューを付けていないのだが、如何せん話題の村上春樹新作なのでスルーするのもなぁと思いまして。
実は村上春樹作品は初めて読みました。雰囲気としては伊坂さんに近いかな。私は「解りやすい文」が苦手で、伊坂さんとか有川さんとか東野圭吾だとかはあまり好きではない。解りやすい文はストーリーが面白ければ非常にヒットします。誰でも読めるので。これがおそらく後にライトノベルをヒットさせた要因だと思います。読書をしないひとでも読める簡単な文だから全国でヒットする。村上春樹もちょっと他の作品を覗いてみた限り、このタイプです。対象年齢が全般というのはおそらく読書界隈というか小説業界というか、そういうところから観たら大いなる貢献だと思います。
ただ、私個人は時々辞書を引いて読むようなものが好きなのでちょっと軽く感じるというか物足りない。まずその一点で星を一つ下げました。
私は過去に伊坂さんの『アヒルと鴨のコインロッカー』のレビューで、伊坂文体は上記と同じ理由で好きじゃないと書いたのだけれど、ストーリーが素晴らしかったので星5にしましたしアレはとても好きな小説です。ただ、この『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』はストーリーもシンプルでメッセージも伏線回収も特に惹かれなかったので更に星を一つ下げて3で。
村上春樹作品は『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』も一応手元にあるので後で読んでみようと思います。それでいまいちだったら多分合わないんだろうなぁ。
一冊で全てを決めるのはよくないと解ってはいるのだけれど、やはり小説家はたまたま手に取った一冊で惹きつけられるくらいじゃないと……特にここまでの大作家となれば。
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